平成30年度施政方針

更新日:2019年07月01日

政令第302号 天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日を定める政令

 内閣は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)附則第1条第1項の規定に基づき、この政令を制定する。天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日は、平成31年4月30日とする。

 平成29(2017)年12月1日の皇室会議の議を経て、天皇陛下の退位日を定める政令が8日の閣議で決定されました。

 6月16日に公布された特例法では、天皇陛下が、昭和64(1989)年1月7日の御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられることや、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範第4条の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとされており、84歳のお誕生日直前の昨年末に至り、ようやくその施行日が明確化されたことになります。

平成の御代

 改元の年にベルリンの壁が崩壊し、ゴルバチョフとブッシュによるマルタ会談で東西冷戦が終結することで、それまでの緊張感を伴いながらも安定した戦後体制に終止符が打たれました。そして、イラクのクウェート侵攻により始まった湾岸戦争によりテロリズムが世界に拡散されることとなるとともに、革命の実現のために多くの国民を粛正する一方で革命を輸出し続けていたソヴィエト連邦が解体されることで核の拡散が進行、世界は不安定化の時代へと漂流しはじめました。わが国では大蔵省の失政によりバブル経済が弾け、以来、失われた10年と言われる長期低迷の時代を迎えました。また、阪神淡路大震災とオウム真理教事件は、わが国の安全神話を根底から覆す出来事でした。アメリカ同時多発テロ事件はテロと核の拡散を現実の脅威としてアメリカに受け止めさせ、イラク戦争をはじめとするテロとの戦いが本格化しました。

 地方分権一括法と中央省庁等改革基本法によりわが国の統治機構は大きく変わる一方、聖域なき構造改革による規制緩和の推進で経済構造もその姿を変えていきました。そこに襲ったリーマン・ショックをはじめとする世界同時不況が、規制緩和された社会をさらに格差あるものとしていきました。そうした国民の不満を受けて政権交代が行われましたが、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故により、わが国の経済社会の地平は一変してしまいました。しかし、わが国の政治は政争に明け暮れ、政権が再交代したものの、共産党中国の台頭と南西諸島方面への圧力、復活したロシアのクリミア侵攻と北方領土へのミサイル配備、北朝鮮による核・ミサイルの脅威など、わが国を取り巻く軍事環境の劇的な変化への対応は、もはや待ったなしとなりました。そして、わが国経済は緩やかに回復が見られつつあるものの、超高齢社会の到来による地域環境の変化と平成23年以降始まった人口減少による労働力人口の不足を、インターネットやAIなどを活用したソサエティ5.0と地域共生型社会の構築でどのように乗り切ることができるのかという課題を突きつけられてきたというのが、平成の御代の駆け足のおさらいということになるでしょう。

 平成は31(2019)年4月までとされておりますので、年間を通して平成である施政方針はこれ限りとなり、平成30(2018)年度は次の新しい時代へのステップアップの準備の年であるともいえます。

狂暴化する世界と安定する国内経済

 平成29年の世界は、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長に振り回された1年であったといえます。トランプ大統領の手札を読み切れなかった各国は最初のうち戦々恐々としていました。しかし、4月危機を乗り切った後、ホッとした共産党中国の習近平国家主席は落ち着きを取り戻し、ロシアのプーチン大統領も独自の勢力圏づくりに力を入れつつあります。イギリスがEU脱退を決めた欧州ではドイツが影響力を大きく伸ばしてきています。

 平成30年の今、世界はアメリカ一強から、新しい帝国主義的分割の時代に移行しつつあるように感じられます。むき出しの軍事力を背景に大国間のゲームが重ねられており、北朝鮮はそのゲームの参加資格としての核にこだわり過ぎ、そのことがアメリカをいら立たせています。そのいら立ちが中露のいら立ちを誘発し、世界のフラストレーションは高まりつつあります。ISが制圧された中東も不安定ですが、確信犯的に緊張が高められている東アジア情勢の渦中にいて、わが国の防衛は国民的課題でもあります。

 国内では、昨年来、森友加計問題が国会審議を停滞させるとともに、答弁からは過剰な忖度がクローズアップされ、流行語大賞ともなりました。とりわけ問題であるのは、財務省による公文書の都合の良い廃棄が納税者の納税意欲減退につながらないか心配されたことでした。現在の国税庁長官による行為であっただけに、納税者のモラルを直撃したことは間違いなく、わが国のノブレスオブリージュが溶解していることを確認できたことは極めて残念なことでした。しかし、それにもかかわらず、10月22日に投開票された衆議院議員総選挙の結果は、野党が分裂して自公与党が大勝し、11月には第4次安倍内閣が発足しました。

 そのことで、政治日程は憲法改正を視野に入れることとなり、主権者である国民は良識ある判断を迫られることとなります。経済は成長にまでは届かないにしても雇用・所得環境が改善し、好循環につなげつつあります。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があり、政府は「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として少子高齢化に対応する「新しい政策パッケージ」を推進することとしています。

リスク管理の時代

 昭和の時代には、東西冷戦体制のもとである意味世界が固定化され、わが国の地政学的な位置から、西側陣営の一員として主体的にリスクを考えなくてもよい側面がありました。それが、平成に入り、冷戦体制の崩壊とともに、世界は不安定化し、これまでリスクと捉えられてこなかったテロリズムや核拡散に関するリスクが増えてきました。あわせて、大震災や気候変動に伴うリスクや、経済や情報通信のグローバル化によるリスクにもさらされるようになりました。平成23(2011)年以降は人口減少もリスクのひとつに数えられるようになりました。こうしたさまざまなリスクに対抗するには、法律や条例に書き込んだり予算を確保したりしたとしても完全ということはあり得ません。なぜなら、リスクは不確実性の問題であり、想定外のこともあり得ることから、リスク対策はあくまでも確率を下げるにすぎないからです。

 しかし、私たち政治に携わる者にとっては、例え確率を下げるだけで完全に解決することができないとしても、多くのリスクについて推論し、見積もりを行い、必要な措置を講じていかなければなりません。「天災は忘れたころにやって来る」で有名な寺田寅彦は、「戦争はぜひとも避けようと思えば人間の力で避けられなくはないであろうが、天災ばかりは科学の力でもその襲来を中止させるわけには行かない。いついかなる程度の地震暴風津波洪水が来るか今のところ容易に予知することができない。最後通牒も何もなしに突然襲来するのである」と述べていますが、少なくとも予め想定される危機については「最後通牒も何もなしに突然襲来」してきても可能な限り迎え撃てるように、普段から計画を定め、準備を整え、訓練をしておく必要があります。

 そこで、平成29年度に策定する「危機管理基本計画」に基づき、すでに策定している「地域防災計画」や「国民保護計画」だけでなく、ソフト面におけるリスク管理を幅広く計画的に進めてまいります。また、ハード面におけるリスク管理として、想定される南海トラフ巨大地震や琵琶湖西岸断層帯地震などに備えて、来庁者の安全を最優先に、被災市民の救助、復旧、復興など被災後の業務継続が滞ることのないよう災害に強い庁舎への改築を行う必要があるため、周辺の施設整備を含め機能を集約し複合化するための基本設計に取りかかります。

 さらには、将来の人口減少を控えて、市民の合意形成はより厳しくなってくると想定されることから、そうしたリスクを避けるべく、地域活力の増進や社会保障の維持と財源の確保に関するバランスを今後どのように確保していくかについては、条例や予算の議決権を有する議会においてこれまで以上に議論を深めていただきたいと存じます。情報伝達の迅速化や情報の共有化、ペーパーレス化などに資するために、議会においてもタブレット端末の導入を進めてまいります。

地域創生としごとづくり

 平成27(2015)年10月に策定した「きらめき・ときめき・元気創生総合戦略」に基づき、働く場を創出するために積極的な施策を展開してまいります。平成29年6月1日に策定し、9月29日に国の第1陣同意を得ることができた地域未来投資促進法に基づく湖南市地域基本計画をもとに、平成30年1月24日に国の同意を得た滋賀県全域基本計画と合わせて、地域の特性を生かした高い付加価値を創出しながら、地域の事業者に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、地域経済を牽引する事業の創出を促進してまいります。

 また、政府が開会中の通常国会に提出を予定している革新的事業活動による生産性の向上の実現のための臨時措置法(仮称)が成立した後、市の導入促進基本計画を策定し、国の同意を得た後、該当する中小事業者等の先端的設備投資に対して固定資産税の課税標準を3年間ゼロにしてまいりたいと考えております。この措置によりまして、地域未来投資促進基本計画と合わせ、中小企業にとって湖南市を県内でも最も投資しやすいまち「未来投資促進都市」としてまいることで、市内におけるしごとを創出してまいりたいと存じます。その際には市税条例の改正が必要となってまいりますので、議会のご理解をお願いします。

 さらに、今議会には湖南市地域産業振興基本条例案を提案してまいります。地域産業の振興に関する基本理念を定め、地域産業に関わるさまざまな主体の役割を明らかにすることにより、地域産業の総合的な振興を推進し、多様で活力ある地域経済の活性化を図り、市民生活の向上につなげてまいりたいと存じます。こうした条例は本市ではこれまで制定してまいりませんでしたが、お認めをいただけましたら、条例に沿い計画的戦略的な産業振興を図ってまいることといたします。

 昨年、「未来湖南市政策コンテスト」を開催しましたが、その提案を受けて、本市の農業生産活動において、食品安全、環境安全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理であるGAPの導入を官民パートナーシップで支援してまいります。また、「みらい公園湖南」内の魅力発信拠点施設活用や引き続いての市民農業塾実践編による就農者の育成、生産作物販売のマーケティング指導、産学官連携による6次産業化やブランド化、高齢者や障がいのある人などの新規就農促進など農業の未来化を進めてまいります。

 さらに、本市産業の主力を担う第2次産業を将来にわたって支える人材を確保することが重要でありますことから、引き続き若年者や障がいのある人などを対象とした市内企業が参加する合同就職面接会を開催したり、魅力ある職場をつくり人材の定着を図るためにワークライフバランスや在宅ワークの推進、ものづくりの魅力を伝えるセミナーなどを開いたりすることで、離職や若年層の市外流出を防止するとともに市内企業への就労を促進し、経済の活性化と人口の社会移動増につなげてまいります。

 サービス業を中心とする第3次産業としては、空家を活用するための中心組織を設置し、「空家等対策計画」に基づき、市内空家・空き店舗の適正管理に加え、居住希望者や創業希望者とのマッチングによる空家活用・創業支援を進めるとともに、地方創生拠点整備交付金により整備拡充した十二坊温泉ゆららを拠点とし、三雲城址周辺のAR再現や動画コンテンツ追加製作などにより観光・情報発信に努めてまいります。

地域創生とひとづくり

 こうしたしごとを活用するひとが育つ環境づくりを行うのが政治や行政の役割であり、平成30年度はそうした環境整備を進めてまいります。

 まずは、シティプロモーションにしっかりと取り組むために、人材の育成やネットワーク化を行うとともに、ホームページのリニューアルに向けた準備に取り掛かることとします。地域おこし協力隊事業については、これまで移住定住を目的に地域活動を中心に取り組んでまいりましたが、地域課題解決型の起業を牽引することを主眼に移し、ローカルベンチャー事業として再構築いたします。また、クラウドファンディングを活用して、地域でさまざまな活動をしたり起業をしようしたりとする市民を応援する環境を構築してまいります。

 子どもが育つ場を提供することについては、平成29年度には妊娠期から幼児期の子育て世代の支援の充実を図るとともに、産前産後のサポートや産後ケア事業により妊娠期からの切れ目のない支援を実施するために「子育て応援サポートセンター」を設置しましたが、特定不妊治療や産後ケアなど妊娠出産に対するサポートをはじめ、予防接種や病児保育、学童保育なども引き続き進めていきます。また、民間保育事業者の施設整備にかかる補助を行い、不足する保育施設を新たに整備していきますが、長年課題とされてきた公立保育施設等の民営化についても準備を進めてまいります。

 教育については、詳細を教育長による教育方針演説に譲りますが、引き続き特別支援教育やインクルーシブ教育、学校休業日や放課後の学力補充、日本語初期指導など切れ目のない教育を提供するとともに、新たに教員の働き方改革としてサポートスタッフや部活動指導員を配置するなどを行います。また、ハード事業に関しては学校施設の耐震化工事が終了したことから、今後は小学校の空調機器整備を進めてまいります。さらに、図書館システムを更新するとともに、電子図書館システムを導入してまいります。

 国においては、地域共生社会の実現に向けて閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」や厚生労働省の「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部が決定した「『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)」などに基づいて、「地域課題の解決力の強化」や「地域丸ごとのつながりの強化」、「地域を基盤とする包括的支援の強化」、「専門人材の機能強化・最大活用」といった方向性で改革を進めていることから、本市といたしましても、「第3次地域福祉計画」に基づいて、その基本理念である「一人ひとりができる役割 もれない支援 行ったり来たりの思いやりのまち」を実現するために、地域まちづくり協議会における役割の明確化や地域包括ケアの確立、専門的人材や地域のさまざまな主体が連携できる体制を構築していきます。

 とりわけ、障がいのある人とともにいきいきと暮らすことのできる地域共生社会づくりについては、障がい福祉サービスの提供と地域生活支援事業の推進に向けて中間見直しを行った「第2次障がい者の支援に関する基本計画」と新たに策定した「第5期障がい福祉計画」および「第1期障がい児福祉計画」に基づき、「第3次地域福祉計画」のめざす「十人十色に参加できる『役』づくり」、「垣根を越えてつながりあえるまちづくり」の基本目標を実現するべく、障がいのある人ない人が役割を担いあい、つながりあえる地域づくりに取り組みます。

 医療・介護分野では、甲賀保健医療圏域における医療提供体制について、1次診療施設と連携した後方支援病院としての公立甲賀病院を中心とする救急、外来、入院、地域移行のサイクルを確立するために、同病院の平成31年4月の地方独立行政法人化に向けて諸準備を加速化してまいります。一方、平成30年4月から国民健康保険財政運営が都道府県化されますので、県や各市町と十分に連携をとってまいりますとともに、交通手段の発達と整合性の取れていない県内の保健医療圏域など地域医療提供体制の見直しについては引き続き地域医療政策に責任を有する県に強く求めてまいります。

 また、医療にかかるまでの健康づくりについても、健康増進のため努力した人にポイントを付与して健康寿命の延伸に対するインセンティブを働かせますとともに、こなん・ザ・ボイスプロジェクトやいきいき百歳体操、百歳大学、シルバー健康農業塾など高齢者の地域デビューの場を設け、生きがいづくりや介護予防に努めてまいります。

 さらに、本市の高齢化は急速なテンポで進んでおり、高齢者が心身の健康を維持しながら、安心して生き生きと暮らすことのできるまちづくりが急務であることから、「第7期高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、生きがいづくりや健康づくりと介護予防、自立支援、支え合いの地域づくりを進めます。また、認知症になっても本人の意思が尊重されるケアや権利擁護体制の構築や地域包括ケアシステムが円滑に運用できるように在宅医療・介護連携や認知症施策の推進に取り組んでまいります。

地域創生とまちづくり

 しごとを担うひとが生活をし、活躍をする舞台がまちであり、まちづくりは全ての自治の基盤となるものです。高度経済成長期以前は、道普請や川浚えということばがあったように、まちづくりは地域が参加して全員で行うものでした。しかし、企業戦士を大量に必要とした国策に従い、地域から働き手は都会へ出ていき、経済活動が最優先となり、まちづくりは役所が担うこととされました。

 これからの時代には、こうしたまちづくりを再び地域の市民の手に戻していかなければなりません。新しい公共、緑の分権改革、地域経済循環、地方創生とその言葉は変われども、根底に流れている基本的な理念は、住民自治の拡充と官民パートナーシップの推進です。地域において住民自治を担っていただく地域まちづくり協議会には、地域福祉を支える地域ハブとして大きな期待をしているところです。引き続き地域活性化先進モデル事業交付金により地域課題の解決に取り組んでいただきたいと考えます。

 「地域自然エネルギー地域活性化戦略プラン」に基づき、エネルギーの自給率や利用効率の向上を図りながら地域自然エネルギーを活用したまちづくりを進めていますが、増資をいたしましたこなんウルトラパワー株式会社と協働して、災害に強い地域づくりを広域で進めるとともに、地域振興に取り組んでまいります。また、引き続きイモ発電や電力の見える化、防犯灯・街路灯のLED化などについても進めてまいります。そうした取り組みの上位計画として、平成30年度を最終年度としている「環境基本計画」の改定を行います。さらに、天然記念物でもあるウツクシマツ自生地の保存活用事業に取り組みます。

 上水道においては、美松配水池の更新工事をはじめ、老朽化する各配水管の布設替えなどを進めてまいりますし、下水道については維持管理に軸足を移しながら、災害に備えてBCP(業務継続計画)についても策定していくこととします。

 災害に強いまちづくりとしては、災害時の迅速な復旧の基礎資料とするため、引き続き石部北工区、岩根花園工区の地籍調査を進めるとともに、災害時等の情報基盤となる住居表示を柑子袋地先で整備してまいります。また、既存住宅の耐震診断、耐震改修を促進するため、木造住宅耐震診断員の派遣や木造住宅耐震改修に対する補助を行います。

 そして、これらのさまざまな地域活動が展開されるためのインフラ整備も進めてまいります。道路整備といたしましては、甲西駅美松線や(仮称)吉永山手線の道路新設工事、市道田代ヶ池1号線歩道設置工事や、市道堂の城線ほかの安全対策工事、道路ストック点検に基づく舗装修繕工事、橋梁の定期点検などを進めてまいります。河川につきましては、石橋川護岸の整備工事をはじめ、普通河川の維持補修や調整池の浚渫などを行ってまいります。排水対策といたしましては、正福寺地先や宮の森団地での対策工事に取り組んでまいります。JR草津線三雲駅周辺整備事業については南北駅前広場の整備を引き続き行うほか、石部駅周辺整備事業についても補償調査などを進めてまいります。

近隣自治体との外交方針

 自治体間外交については、まず、甲賀市との関係において、広域的に連携を深めることのできる枠組みを築いてまいります。旧甲賀郡7町の時代には、甲賀郡町村会、甲賀郡行政事務組合、甲賀郡国民健康保険病院組合のそれぞれの枠組みで融通を図りながら連携を行ってきましたが、町村合併により甲賀郡町村会が消滅すると、両市の関係は一部事務組合である甲賀広域行政組合と公立甲賀病院組合の2組織のみとなり、このふたつの一部事務組合が所掌する以外の広域行政上の課題を協議解決するスキームが不在となっていました。しかし、両市の関係する広域的課題は2組織の分掌する事務だけではないことから、新たに甲賀市との間で広域的に連携を図ることのできる枠組みを構築してまいります。

 栗東市との関係においても、これまで栗東・湖南広域協議会で連携を図ってきたところですが、国道1号整備、野洲川改修、JR草津線複線化など協議の課題が固定化してきておりますので、甲賀市との関係を整理するのと合わせて、新たな協力関係の枠組みを模索してまいります。様に、野洲・湖南・竜王総合調整協議会を通じて、野洲市、竜王町との関係についても、さまざまな可能性を探っていくことが必要であると考えております。

理想主義のまちを目指して

 戦前の著名な自由主義知識人のひとりである河合栄治郎は、自由主義を自由の実現を目的とする社会思想であるとし、その自由主義の哲学は、自然法、功利主義、理想主義であるとしました。

 そのうちの理想主義の道徳哲学において、何が最高の善か、何が最も価値あるものか、何が人生の目的かと問われて、「それは人格の成長であると。人格の成長が唯それのみが最高の善であり、それが窮極の價値あるものにして、他のものは之によつて價値付けられるものである」と答え、ミルの「人生の目的即ち漠然たる刹那の欲望に依るに非ずして、永遠不易の理性の命ずる人生の目的は、各人の有する能力をして完全充足の一體として、最も高度にして又最も圓満なる發達を爲さしめるに在る」という言を引用しています。

 これをもって、河合は国家主義、利己主義、マルキシズムの唯物論に対峙する一方で、人格の成長にとって、偉大なる人格の思想からの感激の享受や、他人の思想と人格に対するときに常に寛容と雅量を持たなければならないこと、さらには他人の人格の成長を意図するのではなく自己の人格の成長を所期すること、形式や因襲や伝統に支配されてはならないことなどを指摘しています。

 河合は述べます。「各人は夫々異なる遺傳と環境との下に生れ、異なる經驗を累積して、個性ある人格を持ち、又特異の人格を持つべきである。たとへ他人の思想や人格はいかに偉大であらうとも、又人たるに限り多分の普遍性を持つてゐようとも、而も個性はその影を渡してはゐないのである。眞に自己の人格の成長を望むものは、他人よりのものを單に他人のものとしてでなしに、一度は自己の鎔鐄爐に投入し、更めて自己のものとして攝取せねばならない。然るに現在に於ていかに多くの人が、他人よりのものを漫然として受取り、平然として享樂しつつあるか。自己の足の上に立たずして、他人の足に立つことは、人格成長に何の役立つ所がない」と。

 人格についてもそうですが、地方創生の世の中にあって、これを地域に置き換えるとよく理解できる言でもあります。まさに、都市格をどのように築き上げていくか、他のまちを羨み妬むだけでは解決につながらず、自らのまちをどうしていきたいのか、その自己決定と自己責任が問われているとも言えます。

 そして、理想主義の社会哲学としては、個人の集団である社会での生活において、最高の価値は人格の成長であるとしながらも、誰の人格の成長かと問われたときに、あらゆる個人の人格の成長であると河合は定義づけました。本市がこれまで取り組んできた人権重視のまちづくりや発達支援や外国籍市民との共生や地域まちづくりなどは、まさにあらゆる個人の人格の成長を支え、伸ばすための取り組みであったということです。

 そうした自由主義においても、河合は形式上の自由によって実質上の自由が否定されるという対立反発の関係が生じるとします。しかし、議会の多数派が言論の自由や政治上の自由を否定する場合を想定したうえで、それでもやむを得ないものだとしました。それだけ議会におけるそれぞれ背景の異なる代議による合意形成は重要であるということです。

 最後に、河合は「人格の成長を圖るに必要な條件は、自己も亦無視されない獨自の存在であると云ふ自覺を與へることである」と述べています。平成30年度の湖南市も「自己も亦無視されない獨自の存在」という民主主義の基本が侵されることのない湖南市でありたいと念願し、施政方針演説を締めくくります。

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