平成31年度施政方針

更新日:2019年07月01日

31年2月25日

 

「平成の三十年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが、それはまた、決して平坦な時代ではなく、多くの予想せぬ困難に直面した時代でもありました。」

御在位三十年記念式典のおことばで天皇陛下がそのように評された平成の御代が終わりを告げようとする今年、わが国を取り巻くさまざまな環境は、予定調和で安定した時代をすでに後にし、日ごとに不確実性をいや高めています。

2年前のトランプ・米国大統領の出現により、国際社会は、グローバルで自由な協調体制から、剥き出しの自国中心主義に大きく転換しつつあります。その象徴が米国とメキシコの間に建設されようとしている壁であり、トランプ大統領は2月5日の一般教書演説でも、不法移民という無法化した国境での危機を終わらせるための物理的な壁の計画に共和党と民主党が力を合わせなければならないと呼びかけました。また、ロシアとの間では、2月1日以降、INF=中距離核ミサイル全廃条約の破棄通告が応酬され、核戦力の無条約時代への移行が現実となりました。非核都市宣言を行い、平和首長会議加盟都市である本市としても重大な関心を持って注視する必要があります。

そのロシアは昨年11月25日にアゾフ海でウクライナ海軍艦艇を拿捕してクリミア半島の緊張を高めましたが、背景にはトランプ大統領による再三にわたる北大西洋条約機構からの脱退発言があります。プーチン・ロシア大統領の積年の目標であるNATO弱体化とともに、今後は欧米からの経済制裁を回避するためのアジア志向、東方シフトが促進されることが予想されます。ロシアは東アジアで台頭する共産党中国の進める一帯一路構想と接続した大ユーラシア・パートナーシップを視野に入れていますが、共産党中国としては米国との間で貿易戦争が激化しており、中露の密接な関係構築までにはいまだ予断を許しません。

トランプ大統領は3月1日の貿易協議期限までに米中首脳会談を開く予定はないとし、さらなる制裁関税の引き上げを準備しています。米中貿易戦争は、すでに新年早々「アップル・ショック」として経済界へ打撃を与えましたが、こうした経済不振は大陸の共産党一党支配体制へ深刻な影響を及ぼすだけでなく、囚人のジレンマによる米国経済への影響も生じるため、世界貿易全体についても縮小リスクを生み出すことが想定されます。共産党中国については、ウイグルにおける人権侵害への国際的な批判が顕在化するとともに、習近平国家主席が1月2日に行った台湾統一に向けた武力行使を放棄しないという重要演説に、台湾が強く反発していることも不安定要素となっています。

国際経済のリスクとしては、英国のEUからのブレクジッドによるハードインパクトが懸念されるとともに、シリアとアフガニスタンからの米軍撤退による中東の空白を受けたサウジアラビアとイランによる主導権争いを含め、原油供給の不安定化などエネルギー面での不安も挙げられます。また、新年早々、米国ウィスコンシン大学マディソン校の一人っ子政策研究者である易富賢氏は、共産党中国の人口が昨年初めて250万人の減少に転じたことを明らかにし、人口動態上の危機を迎えていると警鐘を鳴らしています。これは単に大陸のみの問題ではなく、世界経済の大きな需要主体がついに縮小傾向を示し始めたということであり、今後の世界経済の方向性に深刻な含みを持たせています。

こうした環境変化に対して、わが国は昨年12月30日に5億人規模の巨大な自由貿易圏である環太平洋パートナーシップ協定を、今年2月1日には世界GDPの約3割、貿易総額約4割を占める巨大な自由貿易圏である日欧経済連携協定をそれぞれ発効させました。しかし、今後は米国とのFTAやロシアとの平和条約がらみの経済協力、日中韓FTAなどをどのように進めるのかについて、わが国には難しい舵取りが求められてきます。本市においては、輸出入に関係する企業が多く立地しているため、国際的な経済環境についての観察を続けるとともに、新規起業や中小企業の生産性向上のための先端的な投資などについては引き続き支援をすることで、地域経済の活性化に努めてまいります。また、消費者サイドからの食品の安全性への不安に応えられるよう「みらい公園湖南」を中心に地産地消農業をさらに進めてまいります。

日露間では1月22日に首脳会談が行われ、平和条約の締結に向けて交渉が重ねられるなか、2月7日の北方領土の日には「不法占拠された日本固有の領土」という表現が消え、2島返還への地ならしが進められているようです。一方、半島情勢では、2回目の米朝首脳会談が明後日27日からベトナムのハノイで開催され、核やミサイルに合わせて拉致問題の解決に向け進捗のあることを期待しますが、融和ムードの陰で憂慮されるのが韓国による事大主義的な動きです。文在寅政権では、竹島問題や慰安婦問題に加え、昨年後半から、海上自衛隊護衛艦自衛艦旗掲揚自粛要請や旧朝鮮半島出身労働者訴訟判決、海上自衛隊哨戒機に対する火器管制レーダー照射と関係悪化を促進する状況が続くなか、2月8日には韓国国会議長が昭和天皇を戦争犯罪の主犯と名指しし、天皇陛下による元慰安婦への謝罪を要求したことにより、日韓関係は史上最悪と言ってもよい状況となっています。

国内においては、200年ぶりとなる御譲位が行われ、天皇陛下が御退位されるとともに皇太子殿下が御即位、文仁親王殿下が皇嗣となられ、改元されることとされております。4月30日に退位礼正殿の儀(仮称)が挙行され、5月1日には御即位に伴う剣璽等承継の儀が行われます。即位礼正殿の儀は10月22日に、文仁親王殿下が皇嗣となられる立皇嗣の礼は翌年に予定されています。改元に伴い、新元号は4月1日に閣議決定、公表される予定ですので、市民生活に影響が大きくならないよう本市といたしましてもシステムの修正に対応してまいります。また、新元号元年は、本市では10月に合併から15周年を迎えるため、記念式典を予定しております。

折しも韓国からの天皇陛下に対する謝罪要求は、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であ」る天皇陛下が「この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とする日本国憲法の依って立つ前提を無視した礼を失するものですが、一方で、2月10日の自由民主党大会で安倍晋三総裁は「立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときが来た」とし、改憲ムードを高めています。しかし、史上初の国会発議による憲法改正が、前例のないなかでどのように進められるかについては、ルール作りから始まるものであり、まだまだハードルが高いとも言えます。憲法改正は地方自治や民主主義にも影響を及ぼしますことから、関心を持って注目する必要があります。

新しい御代となりましても、わが国を取り巻く最も大きなインパクトのひとつは今後の人口減少です。わが国の人口減少は、世界的に見ても空前の速度と規模で進行する高齢化ともに年間出生数も初めて100万人を割り込んだ少子化と相俟ち、東京一極集中と合わせて生産年齢人口の減少による地域経済の活力を奪っていくというトレンドに変わりはありません。国は昨年6月15日に「まち・ひと・しごと創生基本方針」を策定するとともに、12月21日に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を改訂しました。とりわけ、基本方針に盛り込まれたUIJターンによる起業・就業者創出や女性・高齢者等の活躍による新規就業者の掘り起こし、地方における外国人材の受入れという「わくわく地方生活実現政策パッケージ」の着実な実行を進めるとしています。本市といたしましても、移住定住の促進や起業支援、女性や高齢者、障がい者の働く場づくり、若い世代のみなさんがわくわくしてまちづくりに参画できる仕組みづくりなど、短期的に人口を増加させ、地域経済を支える対応を進めてまいります。そのために、ホームページの刷新やVtubarの活用、市のブランド化などシティプロモートを強化していきます。

また、昨年12月8日、出入国管理及び難民認定法が改正されました。新たな在留資格を創設するものですが、事実上の移民法となる可能性が高いことから、自治体としては、外国人を単なる労働力としてだけではなく、地域の生活者として見ていく必要があります。12月25日には、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が閣議決定されましたが、生活者としての外国人の受け入れは、ほとんどが自治体丸投げとなっております。本市においては、平成2年の入管難民法改正以降、主として南米系のニューカマーと呼ばれる外国人との共生を積み重ねてきたことから、こうした経験を活かしながら、外国人材が労働力、生活者双方の立場から地域で共生できる取り組みを続けてまいります。

安心して出産、育児、子育てができるために、国は昨年12月28日に、「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」を関係閣僚間で合意しました。とりわけ、幼児教育無償化は、消費税率引き上げと同時に新元号元年10月から実施される予定とされております。平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」と昨年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」に方向性だけが書き込まれ、何も決まっていないも同然であった幼児教育・保育無償化について、全国市長会としてはほぼ孤軍奮闘して、年末にアウトラインの設計にまでこぎつけたところです。この間の政府の無責任ぶりは強く批判されるべきでありますし、何より自治財政権を平然と蹂躙しようとした点については、将来に大きな禍根を残したと言えます。しかも、2月12日には幼児教育・保育無償化のための子ども・子育て支援法改正案が閣議決定されましたが、現時点においても詳細な制度設計はまだまだ不十分であることから、引き続き10月の実施に可能な限り混乱を生じないように全国市長会を通じて国に協力するとともに、事務的な準備を進めてまいります。ただし、無償化政策が新たな保育需要を掘り起こしておりますことから、さらなる保育の受け皿整備も必要となっており、本市としても、第2次となる「湖南市子ども・子育て支援事業計画」の策定に取り組みますとともに、新元号2年度における公立園の民営化による弾力性の確保や新規私立園の開園による待機児童の解消、地域における子育て支援体制の構築などに努めてまいります。

このように、本市といたしましても、現今の人口減少に応じて、短期的には人口増加や労働力確保に対する施策を進めてまいりますが、現実としてわが国全体の総人口が減少トレンドにあることには変わりがありません。それを国内での短期的な人口の奪い合いで消耗することは、次の世代に対する責任ある態度とはいえません。むしろ、長期的に人口増加に転じる方策を講じていく必要があります。そのためには、魅力ある地域づくりをひとつずつ積み重ねていかなければならないと考えます。

現在、本市においては第2次となる「湖南市環境基本計画」を策定中ですが、昨年4月17日に閣議決定された国の「第五次環境基本計画」では、わが国が抱える環境・経済・社会の課題は相互に連関・複雑化しており、SDGsの考え方も活用して環境・経済・社会の統合的向上を具体化する必要があるとし、地域資源を持続可能な形で活用する「地域循環共生圏」の創造を目指すとしました。本市といたしましても、これまで築き上げてきた地域自然エネルギーをはじめとする地域経済の地域循環という思想をさらに高め、持続可能な循環共生型社会構築を進めていかなければなりません。

本市としては、出資会社である「こなんウルトラパワー株式会社」を活用し、地域エネルギーの地域循環を継続するとともに、グリーンボンドの普及拡大や徹底した省エネルギーの推進、新しいエネルギーの利活用などグリーンな経済システムの構築を目指すほか、バイオマスや廃棄物の活用をはじめとした地域における資源循環や良好な生活環境の保全についての研究を進めてまいります。とりわけ、来年の発送電分離を視野に入れながら、地域新電力会社を中心に地域での分散型エネルギー供給体制による地域の強靭性の強化や電力販売と公共サービスを組み合わせるいわゆる「シュタットベルケ」の実現に向けて取り組みを加速化していきます。その際には、既存エネルギー供給会社や他の自治体、地域に根差した企業、その他の戦略的パートナーとの協力関係を築いていくこととします。

国土強靭化について、国では昨年12月14日に「国土強靭化基本計画」を変更し、南海トラフ地震や首都直下地震等によって国家的危機が発生した際に十分な強靭性を発揮できるよう、総合的・長期的な視点から自立・分散・協調型国土構造の実現を、官民連携や地方公共団体等の体制構築などにより実現するとしています。そのために、防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策を推進するとともに、従前から進められてきた公共施設等の適正管理についても取り組むこととしています。本市といたしましても、大規模災害に耐え、市民の安全と安心を守るための複合庁舎建設に関して基本設計を取りまとめましたが、相次ぐ自然災害からの復旧復興や2020東京オリンピック・パラリンピックに続いて2025万国博覧会の開催が決定したことなどから、資材・人件費の高騰状況は今後も続くと見込まれるため、今後の財政状況に与える影響を慎重に見極めながら、実施設計に取り組むことといたします。また、かねてから準備を進めてまいりましたが、情報システムの危機管理の強化のために、基幹系システムを「おうみ自治体クラウド」に移行いたします。さらには、災害対策本部機能の強化や地域防災リーダーの育成、洪水災害時に避難の目安となる想定浸水深の見える化など地域強靭化を進めてまいります。

子どもたちの健全な育みは、次の世代のまちづくりを力強く支えてくれることにつながります。そうした観点から、「湖南市教育大綱」にありますように、糸賀一雄の言う「この子を育てたら立派になるというのではなくて、むしろこの子自身が育つ力をもっているから育てさせてもらうことができる」と説明する「教育的現実」を体現し、子どもが自分自身で持つ力を発揮できるような環境を整備していきます。本市ではようやく学校校舎の耐震化や空調整備が完遂しましたが、これまでも地域運営学校や地域学校協働本部、特別支援教育や外国籍児童生徒支援、図書館教育や人権教育、教員の自己研鑽支援や働き方改革など、全国に先駆けた取り組みを進めてまいりました。こうした基盤に立ち、平成31年度は「(仮称)放課後宿題広場」の実施や学童保育の増設、日本語初期指導教室(さくら教室)の強化など、家庭学習や自主学習を進めることができる環境の整備を展開してまいります。

滋賀県は、昨年3月に「健康いきいき21-健康しが推進プラン(第2次)」を改訂し、みんなで創る「健康しが」を推進しています。県と同じ昨年3月に第2次の「健康こなん21計画」を策定した本市といたしましても、「生涯を通じて人が輝ける健康なまちづくり」を目指して取り組みを進めているところです。健康こなん21計画では、健康づくりを支える社会環境の整備や生活習慣病の発症予防と重症化予防、分野別や学区別の重点的な取り組みを掲げ、食育まで網羅した健康なまちづくりを進めています。そのために、健康づくりをスポーツや地域社会にまで広げ、官民連携や関係団体、アクティブシニアの自主性に基づく積極的な健康寿命の延伸に取り組んでいきます。とりわけ、高齢世代の活躍の場づくりやいきがいづくりは介護予防や認知症予防にもつながることから、さまざまな活躍メニューに誘導する自立支援や要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現を図るための地域包括ケアシステムの深化・促進を図ってまいります。そのため、地域の一次診療施設である石部診療所および水戸診療所に新しい医師を迎えて在宅医療体制を強化するとともに、公立甲賀病院を経営の自由度を高めて責任体制を明確にするため、4月1日にこれを地方独立行政法人化し、甲賀保健医療圏域の中核病院として質の高い医療を提供することとしています。

こうした社会保障関係経費は年々増加してきておりますが、それを賄う歳入につきましては、これまでからも厳しい状況が続いてきました。それを、合併当初は合併優遇施策と合併特例債を活用することにより、積極的な都市基盤整備に取り組んでまいることができたところです。平成30年度で学校施設耐震化や大きな道路改築事業などについてはある程度目途がついたことから、いわゆる平時ベースとして予算編成を行い、平成31年度についても同様の方針で予算案を編成いたしました。しかし、先ほど申しましたように社会保障関係経費は年々増加を続けておりまして、合併後、投資的経費を抑制し、人件費を削減しながらやり繰りに努めてはまいりましたが、平成23年度以降は税収と義務的経費が逆転し、現在の税だけでは賄いきれない状況となっております。今後、複合庁舎整備や石部駅バリアフリー化を除いたといたしましても、社会保障関係経費の財源手当てはもはや避けることのできない必至の状況です。一方で、昨年来、議論を交わさせていただいております子どもの医療費の公費助成や家庭的保育支援手当の創設、高齢者の日中移動支援などを実現するためには、さらに多額の財源が必要となってまいります。

そうしたことから、恒常的かつ安定的な財源を創出しなければなりませんが、今年10月の消費税収の増加分につきましては、自治財政権を顧みない国の方針により幼児教育・保育無償化にほぼ充当されることとなりました。そこで、独自財源として検討の俎上に置くことができるのが、まずは固定資産税率の引き上げであります。これは資産課税であり、生活困窮者への影響は小さく、かつ、全世代型社会保障を安定的に支えるための財源としては一定の妥当性を持つものでもあります。一方、これまで本市においては、都市計画税を導入してまいりませんでした。本来、都市計画税は都市計画事業や土地区画整理事業の原資に充てるために徴収することができるとされる地方税のひとつでありましたが、これまでは、これを徴収しなくても、湖南工業団地をはじめとする数多く立地する企業などからの法人税収により、社会保障関係経費に加え、社会資本投資までも賄うことができていました。しかし、最盛期と比べて法人税収が減少しているのに対して、毎年1%ずつ高齢化人口が増加するなど急速な超高齢社会化が進行中であり、それに伴って経済活動を支える労働力人口が減ってきております。これまでのように社会保障関係経費を圧迫しないようにしながら、必要とされる地域の強靭化や老朽社会インフラの更新・長寿命化などを着実に進めるためには、社会資本投資を目的とした安定的な財源の別途確保が不可欠となってまいります。平成31年度はこうした新たな財源についての議論を深めてまいります。

また、課税客体を増やすための都市開発につきましても、民間投資を誘発しながら進める必要があります。駅周辺事業が一定進捗してまいりました三雲駅では、ようやく駅南側を含めた周辺の都市開発を進めることができるようになりました。2月14日には三雲駅周辺市有地活用プロポーザル審査委員会を設置いたしましたので、これから民間開発を進めるための提案を募集していくことといたします。石部駅のバリアフリー化につきましては、財政上の健全性を見合わせながら、三雲駅周辺整備事業に続いて取り組むことができるように、石部駅周辺整備設計業務委託を発注してまいります。さらには、石部緑台周辺や菩提寺広野周辺などの民間開発についても、必要度や進捗度に応じて支援をしてまいります。

民間活動を誘発するための社会資本整備については、三雲駅および石部駅周辺での立地適正化を進めますとともに、上下水道については管路の長寿命化や計画的更新と耐震化による経営健全化などの戦略的な対応を行い、甲西中央橋の修繕設計や一の瀬大橋、長谷橋の修繕工事など橋梁長寿命化、市道狐谷線や市道桐山1号線の歩道整備測量設計、市道甲西駅美松線道路新設工事などを行います。とりわけ、市道甲西駅美松線の整備と連携しながら天然記念物平松のウツクシマツ自生地の保存活用計画の策定を進め、自生地の保護と活用に取り組んでいきます。

本市では、平成28年度に「ずっとここに暮らしたい!みんなで創ろうきらめき湖南」を将来像に掲げた「第二次湖南市総合計画」を策定して4年目を迎えます。そのため、平成31年度と翌年度の2か年をかけて5ヶ年間の取組進捗状況を精査し、後期計画の策定を行うこととします。そして、こうした地方行政を計画的かつ着実に進めるためには、市役所自身の改革も求められてきます。複合庁舎整備やシュタットベルケの取り組みなどとも連携しながら、老朽化した個別公共施設の整理統廃合や長寿命化など総合管理の方向性を打ち出して対応するとともに、市役所職員の働き方を改革し、内部統制体制についても確立していくことが必要となってまいります。地域においては、地域まちづくり協議会を広域単位として、区・自治会や各種公共的団体が重層的に自治を進めていただいていますが、自助、共助、公助のうち最後に公助を受け持つ責任主体としての市役所の自覚を促し責任を果たせるように、職員体制を引き締めて市民の安全と安心を確保してまいりたいと思います。

この世界は、可能性で満ちています。そうした可能性は多様性の中から生まれてまいります。障がい者アートの世界から注目され始めた「アール・ブリュット」という新しい価値の創造、原子力発電所に反対する運動から広がり始めた自然エネルギーの活用が生み出した地域循環型の共生社会、殺処分されてきた動物たちに対する愛護の発想を一歩進めたヴァーチャル都市「こにゃん市」の開設、外国籍市民が増えたことによる内なる国際化とグローバル化との連結など、本市のさまざまな先進的施策は、既存施策の延長線上とは異なり、多様な発想からクリエイトされたものがちりばめられています。

また、若い世代からの提案を施策化しようとの挑戦から、平成28年度には「湖南市JK課プロジェクト」を発足させて女子高生視点のまちづくりを進めるとともに、平成29年度の「未来湖南市政策コンテスト」では、県内では時代を先取りした農業のGAP対策の提案をいただきました。TPP11や日EU・EPAが現実化した今、農業者のみなさんに引き続き強くご理解をいただきながら先導的に進めていく必要がある施策のひとつでもあります。平成30年度の「こなん政策アカデミー」からは、中学生から自由なまちづくり提案を募り、実現につなげるアイデアキャンプや、全庁横断的に市民の健康づくりに取り組もうとする健康オリンピックなどの提案もいただいておりますことから、これらの施策化に取り組んでまいります。昨年12月13日に三雲小学校4年生のみなさんから提案いただいたドッグランの設置については、候補地の選定も含めて平成31年度に検討を進めてまいりたいと考えております。

次の時代にも選ばれ、活力を持続させることのできる地域づくりには、本市を多様性の満ち溢れたまちとし、可能性を追求できるまちにしていかなければなりません。市外から本市を訪れた障がいのある人が、このまちは障がいを特別視する刺すような視線を感じないので過ごしやすいと本市の感想を述べていただいたように、昨年11月13日に来市した在名古屋ブラジル総領事が、湖南市は愛のあふれた温かいまちだとの感想を述べていただいたように、これからもさまざまな立場のみなさんを快く受け入れる寛容度の高い都市づくりを進めていく必要があります。誰もが気持ちよく過ごすためには、お互いを思いやり、少しずつの譲歩と合意による地域づくりを進めることが大切です。

民主的な合意形成を透明性をもって実現していくことのできる寛容都市づくりを引き続き進めてまいりたいと考えておりますので、議員のみなさん、市民のみなさんにご理解とご協力をお願いし、平成31年度の施政方針といたします。