平成17年度湖南市施政方針

更新日:2019年07月01日

平成17年3月7日

はじめに

本日ここに、平成17年度の湖南市の予算および諸議案をご審議いただくにあたり、議長のお許しを得まして、私の市政に対する運営方針の一端を申し述べ、議員ならびに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

今年ほど、今さらというくらい「還暦」という言葉が多用された新年を迎えたことはなかったのではないでしょうか。いわゆる「戦後体制」から60年の日月が経過し、それまでは政治の一部で日程に上がっているにすぎなかった「改革」がにわかにクローズアップされるようになり、ようやく我が国の様々な制度疲労の現状が、聖域なく広く人口に膾炙(かいしゃ)するようになってまいりました。

私たちは、平成19年に団塊の世代が大量に現役から離れはじめ、そして世界の大国では初めて人口が減少しはじめるという、いまだかつて誰もが経験したことのない世界に突入しようとしております。また、長期低迷し続け、そして昨年は逆にバブル以来の伸び率を示した景気の内包するギャップは依然として存在し、法人企業景気予測調査(財務総合政策研究所・平成16年12月27日公表)によれば、大企業は「上昇」超ながらその幅は縮小しており、中堅企業は「下降」超に転じ、中小企業は「下降」超ながらその幅が縮小しております。さらには、今年2月16日に、地球温暖化防止のため二酸化炭素など温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書が発効いたしました。平成9年12月の合意から7年越しの難産ではありましたが、批准国が温室効果ガスの削減義務を課せられ、我が国でも炭素基金の準備や追加対策の確立など、本格的な取り組みが始まりました。

「くにのかたち」を真剣に考えることが、一部の政治家や言論人の独占物ではなくなり、その成果にはまだ議論があるものの、これまでにない情報の公開と国民の参加のもとで改革が進められております。特に私ども自治体に取りましては、急速に進む少子高齢化や景気の迷走、さらには環境対策の必要性など大きな周辺環境の変化に起因する財政構造の硬直化が喫緊の課題として咽喉元に突きつけられており、その結果、平成5年の憲政史上初の衆参同時議決を濫觴(らんしょう)とし、蕩々と流れる大河にまで育った地方分権のうねりは、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)改革、平成の大合併、いわゆる三位一体の改革、そして道州制の検討など、これまで常識として考えられなかった、また考えようとしてこなかったパラダイム変革までを引き起こしております。

と同時に、市民参加による地域の運営という命題も大きく掲げられました。『代議制統治論』を著した19世紀の思想家ジョン・ステュアート・ミルは、「理想的に最良の統治形態とは、主権すなわち最後の手段としての最高統制権力が、共同社会の全集合体に付与されているものであって、各市民が、その究極的主権の行使に発言権を有するだけでなく、少なくともときどきは、…公共の職務をみずから遂行することによって、統治に実際に参加することを求められる」と述べておりますが、まさにこうした社会の実現が、ここに至って時代の要請とされているのであります。

地域を構成する主体が、それぞれ自立し、また自ら律しながら、互いに理解し協働しあえる社会をいかに築いていくかが重要であり、そのための大局観を市民すべてが共有しなければいけない時代を迎えたわけであります。

地域間競争という大嵐は刻々と近づいております。その予兆としての風をすばやく感じ取り、舵を切れるかどうかで、これからの自治体の行く末が大きく変わってくるであろうことは、議場におられる議員の皆様もご承知いただいていることと存じます。

こうした状況を背景に、昨年10月1日に誕生いたしました湖南市は、初めての12ヶ月年度を迎えるわけであります。そのため、今議会にご提案いたします予算案は、合併後初の通年予算となっております。また、その中ではいわゆる「三位一体の改革」を含む大幅な財源不足に対する事業の見直しを行っておりますし、さらには、合併特例債をはじめといたしました合併関連事業を盛り込んでおりますが、いずれにいたしましても厳しい予算編成となったことは否めない事実であります。

それでは、昨年12月議会の所信表明で述べました5本の柱に沿って、新年度における主な取り組みについてのご説明を申し上げます。

第1 夢と希望のまちづくり

まず第1に、「夢と希望のまちづくり」であります。

すでに船出した湖南市は、新市建設計画という海図に沿って航行しておりますが、新たに全体を網羅した詳細な「湖南市総合計画」という海図を描く作業をスタートさせてまいります。すでに1月の臨時議会において総合計画審議会設置条例をお認めいただき、市役所内には検討チームを立ち上げて検討に着手しております。これからのまちづくりの指針となる総合計画の策定には、専門家とともに広く市民の皆さんの参加も予定しておりまして、そのための予算を計上させていただきました。本市のすべての計画のバイブルとなる計画でありますので、できる限り早急に策定し、下位に当たる計画の策定につなげてまいりたいと考えております。

合併後のまちづくりを考えたときに避けることができないのが、まちの基軸となる交通計画であります。中でも都市計画の違いによりこれまで進んでこなかった旧両町間の連絡道路をはじめとする道路網の整備は、垣根をなくしひとつのまちとして力を結集するためには不可欠なものであり、総合計画の策定に引き続き計画する都市計画の見直しとあわせて進めてまいらなければなりません。特に、市の東西を貫通する(仮称)三雲・石部連絡道路については、測量設計委託の予算を計上いたしました。測量設計が終われば速やかに用地買収へと駒を進め、旧両町の市民が容易に交流できるようにしてまいりたいと考えます。また、本市の地形状の特徴から南北連携に意を用いる必要があり、南北幹線軸である甲西橋の改良事業についても、水戸・岩根方面から中央・石部方面をつなぐ主要道路として、詳細設計をしてまいることとしております。いずれも合併関連事業となります。

また、草津線の利便性向上のために草津線複線化期成同盟会で取り組んでまいりました甲西駅構内の待避線設置につきましては、甲西南部ほ場整備の進捗でそのめどがついてきたことにより、来年度の総会において前向きに対応することとしております。それとともに、駅や市役所等と地域とを結ぶ交通機関として重要なバス路線については、かねてから課題となっておりましたJR三雲駅と下田間の路線確保や旧甲西地先における増便、旧両町間の連絡路線の新設など、合併関連事業として可能な範囲で対応してまいりたいと考えております。

第2 ものづくりの再生と育成

次に、「ものづくりの再生と育成」であります。

所信表明で述べましたとおり、地域産業の活性化により住民福祉に所要の財源を確保することが大切であることは、今回の予算編成を通じて痛感させられたことでもあります。企業の新たな固定資産投資による増収も、それを上回る法人税の減収で打ち消されており、分権型社会において自立を求められる自治体としては、経済活性化の加速がいまや喫緊の課題ともいえます。

そのために、旧甲西町時代に経済関係団体や地域団体等から推薦いただいた市民を中心に「経済活性化会議」を設置し、行政への提案や民間活力の導入を図り、元気なまちを再生しようと取り組んでまいりましたが、こうした取り組みを継続強化し、今後は個別具体的に経済活性化の方向性について議論を深めてまいりたいと考えております。専門家のアドバイスも得ながら、地域の特性を有効に活用した経済活性化を進めるための「(仮称)経済活性化指針」を取りまとめ、具体的なプロジェクトにつなげてまいる所存です。

また、継続事業であります甲西南部ほ場整備事業につきましては、紆余曲折はありながらも関係者の皆様の並々ならぬご協力によりまして、念願の由良谷川河川改修にまで辿り着くことができました。同時にほ場整備と広域農道の整備が進められております。この間の関係者のご努力に深甚の感謝を申し上げます。県事業のさらなる推進と合わせ、地元におきましても集落営農体制を確立することにより後継者を確保し、水田農業に加え下田ナスなどの特産品を育成するなどして特色ある農業経営を推進する地域の取り組みを支援してまいることといたします。

第3 若さと元気の人づくり

次に「若さと元気の人づくり」であります。

子どもたちが、それぞれの個性を伸ばしながら、社会性を身につけ、しっかりと次の世代を担っていけるように育つことのできる環境の整備を行ってまいります。

まずは、子どもたちの成長を地域全体で包み込み、保護者とともに見守る取り組みとしての地域運営学校については、県内で初めてその研究校指定を受け、岩根小学校において対応してまいる予定としております。この取り組みについては、後に述べます(仮称)市民センター構想を岩根学区において試行的に取り組むことと合わせ、学童保育所や保育園と連携することにより、地域における次世代育成のモデルケースを模索するものとなります。

全市的な取り組みといたしましては、今議会に設置条例を提案しております教育センターおよび少年センターを中心に、一人ひとりの子どもたちがまっすぐに育つ環境を整備してまいります。特に、教育センターには、教育研究機能と教育相談機能、特別支援教育機能を設けるとともに、生徒指導や特別支援教育における様々な問題に対応するため、中学校では2ないし3名、小学校では1名程度の市単独の教職員をさらに配置し、きめ細かな教育を進めてまいります。少年センターでは子どもたちの支援拠点である「あすくる」機能の設置を図ってまいりますが、「あすくる」とは、子どもたちに明るい明日がくるようにとの願いから命名されたものであります。非行などの問題を抱え、自分の居場所もなく悩み苦しんでいる子どもたちが自分自身を見つめ直し、健やかに成長するための支援事業を行うこととしております。

また、子どもたちの通学安全の確保を目指し、引き続き三雲小学校の通学路であります旧東海道の路側帯にグリーンの着色表示を行うとともに、通学時間帯に不審者事案が多発しておりますことから、地域安全サポーターによる学校下校時の巡回をはじめ、地域の協力を得た安全確保に努めてまいります。

さらに、施設面におきましては、学童保育所に非常通報装置などの安全対策を施すほか、石部南小学校の耐震補強実施設計、岩根小学校の耐震診断調査を行い、順次防災拠点としても活用できるよう年次計画により整備をしてまいります。

第4 安心と愛情の暮らしづくり

次に「安心と愛情の暮らしづくり」であります。

まずは、昨年多発した災害に対する備えとしての「地域防災計画」を早急に策定してまいります。それとともに、これまで旧甲西地域で設置されてきた自主防災組織である「ふるさと防災チーム」を旧石部地域に広げ、多様な災害に的確かつ小回りの効く体制を整備してまいりたいと考えております。

また、総合計画の進捗をにらみながら、地域における福祉施策のあり方を定める「地域福祉計画」の検討を始めてまいりますが、その中で、あったかほーむづくりなど福祉対象者の自立の促進と分野別の縦割りにならない地域全体の福祉化をどのように進めていけばよいかを探ってまいります。中でも高齢者福祉に関しては、平成18年度に抜本的に改革される介護保険制度に適切に対応するべく検討を進めてまいります。障害者福祉に関しましては、発達障害者支援システムが法規範的に未整備であることと、就労支援から生活支援に至る過程の充実が必要であることから、(仮称)発達障害者支援条例の制定を目指しますとともに、障害者の就労を支援するために、雇用者・障害者施設・行政の就労と福祉部門等が協議会を結成し、障害者の就労ニーズと雇用ニーズのマッチングについて研究・研修・調査を進めてまいることとしております。さらに、児童福祉と労働者福祉の向上により少子化対策を図るために、引き続き保育園におけるファミリーサポートセンター事業を実施し、労働者が仕事と育児や介護を両立できる環境づくりを進めてまいります。

地域の医療に関しては、健康推進事業を拡大する一方で、公立甲賀病院を中心に甲賀医療圏域の医療機関間連携を進めるほか、石部医療センターの医療設備と小児医療の充実を行い、地域におけるセンターの機能分担の見直しを検討するとともに、傾斜地に建ちバリアフリーからほど遠い湖南労働衛生センターの移転新築を行ってまいります。

環境問題に関しては、まずは企業等の規制に関する(仮称)環境保全条例の制定を目指しますとともに、平行して(仮称)環境基本条例づくりを市民参加の下に進めてまいりたいと考えております。

第5 公開と参加の自治づくり

最後に「公開と参加の自治づくり」であります。

まずは、分権型社会においては自治体で不可欠となる羅針盤として、(仮称)まちづくり基本条例の制定に、市民と行政の協働の中で取り組んでまいります。また、地域の自治力を高め、地域らしさを確保するために、(仮称)市民センター構想を進めてまいることとしており、今年度は岩根学区をモデル地区として選定し、様々な試行的な取り組みを行ってまいりたいと考えております。先程述べましたように、地域運営学校や学童保育所、保育園などの施設だけでなく、区・自治会や老人クラブ、PTAなど様々な団体との連携も図りながら、あるべき狭域の自治の姿を考えてまいります。さらには、地域の自治の拠点整備をこれまで空白域であった菩提寺北学区で進め、市民自治の確立につなげるために、施設の造成測量設計を行ってまいります。

市役所内部におきましては、「行政改革大綱」を策定し、計画的に市役所の構造改革に取り組んでまいります。また、予算編成過程そのものの見直しを行い透明性と現場性を高め、いわゆる部局枠予算による部局の独立性とマトリックス予算による施策の総合性を確実にするとともに、説明責任を明確にするために評価制度の検討をしてまいります。さらに、市内工業会の協力を仰ぎまして、所属長である管理職の民間企業派遣研修を実施し、民間における工程管理・品質管理・コスト管理・人員管理などのノウハウを身につけるとともに、ISO9001については適応範囲を西庁舎に拡大し、市民サービスの質的向上に努めてまいります。

これまで申し上げました様々な条例や計画を策定する段階では、パブリック・コメント制度による公開と意見募集を行いますし、4月から完全施行されます個人情報保護法の遵守と情報公開条例の適正な運用に努めてまいります。

おわりに

以上、平成17年度の市政運営にあたり、その方針の一端を申し上げてまいりましたが、改めて言うまでもなく国、地方ともに大変厳しい正念場を迎えていることに変わりはありません。
昨年9月に2年間の契約を終え滋賀県を後にした「経営改革ディレクター」の浦茂樹さんが遺したいわゆる「浦レポート」が県庁各方面に衝撃を与えているようですが、「未曾有の大嵐に見舞われつつある滋賀丸を指揮し、目的地に無事横付けすることが滋賀丸船長である知事の責務であります。帆は倒れ、乗組員や乗客にけがも覚悟してもらわねばならないでしょう。また必要であれば積荷を捨てることも決断せねばならぬかもしれません。しかし、絶対に滋賀丸を沈めることがあってはならないのです」というその結びの言葉は、滋賀県をそのまま湖南市に置き換えても十分通用する至言であります。

現在の社会経済状況が厳しい後退局面にあることは言を待ちません。しかし、だからといって、私ども政治と行政を預かるものにとっては手を拱いているわけにはまいりませんし、難に臨みてにわかに兵を鋳、むせぶに臨みてにわかに井を掘っていてはいけないのであります。あらゆる戦線で撤退戦を余儀なくされる状況においては、ひとつの事象だけに囚われるのではなく、あらゆる側面に目配りをしながらも、関連するものを厳選し、せざるを得ない決断には躊躇をしないということが、猛スピードで動く時代からの要請であると考えております。

昨年12月議会でも申し上げましたとおり、異国船打払令から内閣制度発足までの60年、それから敗戦までの60年、さらに今日までの60年は、それぞれが還暦を迎えて完結しながら、新しい時代への変革を遂げてまいったと思います。

これからの新しい60年が、ジョン・ステュアート・ミルのいうような「理想的に最良な統治形態」としての各市民の主権行使たる発言権の確保と、公共の職務の自発的遂行による統治参加の社会が実現されることを念願してやみません。今は、改めて伸び上がるための準備期間であるとも申せます。財政的な厳しさを、逆に市民が公共に自発的に参加するチャンスに変えていくことが大切でありましょう。

そうした活動をサポートし、新しい社会を実現するために、平成17年度に予定いたします諸施策が円滑に実施され、目的を達成することができますよう、改めまして議員各位ならびに市民の皆様のご支援とご協力を心からお願い申し上げまして、施政方針といたします。

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総合政策部 秘書広報課 秘書係

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