平成18年度湖南市施政方針

更新日:2019年07月01日

平成18年3月2日

はじめに

本日ここに、平成18年度の湖南市の予算および諸議案をご審議いただくにあたり、議長のお許しを得まして、私の市政に対する運営方針の一端を申し述べ、議員各位ならびに市民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

今年度(平成17年度)の施政方針演説でも申し上げましたとおり、いわゆる戦後体制から60年が経過し、新しい60年に臨み始めたわが国は、いまだ詳細な海図を得ることなく、わずかにこれまでの経験則にすがりつきながら未知の大海に漕ぎ出した感がいたします。

わが国を取り巻く国際情勢を概観すれば、アメリカ合衆国が中国とインドを世界経済の新たな競争相手として警戒する一方、イラクに続きイランに核開発を放棄させるべく強気の姿勢を見せています。また、パリ暴動やムハンマドの風刺画を発端として、政治学者のサミュエル・ハンチントンが予測した『文明の衝突』が拡大し、パレスチナだけでなく地球規模でキリスト教世界とムスリム世界が先鋭に対立しつつあります。北朝鮮における拉致と核弾道弾の問題や中国とわが国の海底資源紛争など、わが国が日本国憲法の前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」する前提となった「普遍的」であるはずの「政治道徳」は、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視」しないどころの状況ではなくなってきております。

一方、わが国経済の状況は、今年2月17日に内閣府が発表した昨年10月から12月期の国内総生産速報値では、実質前期比1.4%増、年率換算で5.5%増となり、4四半期連続のプラス成長となるとともに、1月31日に厚生労働省が発表した有効求人倍率は、13年3ヶ月ぶりに1倍に回復いたしました。特に滋賀県においては1.2倍という状況であり、波乱含みの東証株価も平均1万5千円から1万6千円前後で推移しているように経済の復調ぶりが目につくようになりました。

好調な経済に反して政治の世界では、ライブドアによる有価証券報告書の虚偽記載やマンションなどの大規模耐震強度偽造、アメリカ産牛肉輸入再禁止、防衛施設庁談合など、国民の信頼を揺るがす事件が連続して明るみに出ております。いずれも、改革イコール改善という早呑み込みばかりが優先された結果、改革の目的自体を喪失し、技巧に走った制度運用の不十分さを露呈したものであり、わが国がこれから作成する海図に暗礁として描き込まれることになるでしょう。加えて、皇室典範改正問題が結論ありきの可能性が高い有識者会議の安易なリードで躓いたように、小泉内閣の終盤になり政治日程に上りつつあった憲法改正問題をも慎重に注視しなければならない状況となってきました。

社会においては、鳥インフルエンザに対する検疫・予防やアスベスト問題をはじめとした健康への不安とともに、宇治市の塾や長浜市の通園途上での児童殺害事件に見られる身近に実感される危険にどのように対処すべきかが国民的な議論を引き起こしております。安心安全が脅かされる中、今年2月1日に消防審議会から「市町村の消防の広域化の推進に関する答申」を受けた総務省は市町村消防本部の再編を検討しはじめる一方、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(いわゆる国民保護法)に基づき国に引き続いて都道府県国民保護計画がそれぞれ策定されました。さらには、社会保障制度が大きく変わろうとしており、特に平成18年度には改正介護保険法や障害者自立支援法の大きな部分が現実の運用を始めるとともに、診療報酬の改定や児童扶養手当・児童手当の国負担の一部が自治体負担に振り向けられるなど、自治体財政を恒常的に圧迫するシステムが動き出すこととなっております。

滋賀県内においては、依然として県の財政状況は好転しておりませんが、市町合併はさらに進み、今年2月13日には長浜市、浅井町、びわ町が合併して新「長浜市」が、また愛知川町と秦荘町が合併して「愛荘町」が誕生し、3月20日の大津市と志賀町の合併で13市13町体制となる予定となっております。いわゆる「三位一体の改革」の自治体への影響がさらに拡大し、限定された地域間競争が激しさを増しつつあります。

こうしたさまざまな環境変化に対応するために、湖南市として2回目となる通年予算案を編成いたしました。合併までの財政状況は旧石部町、旧甲西町とも極めて厳しい状態ではありましたが、合併前には誠意を持って駆け込み事業を行わず、合併後の新市建設事業にもすぐには着手せずに、まずは財政整理を進めましたところ、亡羊補牢の故事にもありますように、「未だ遅しと為さ」ざる結果を招来することができ、編成後の後智恵にはなりますが、一見前年比12.5%増の積極予算にも見える一般会計当初予算案をとりまとめることができました。

しかし、これもひとつには今年度予算を緊縮型とした結果可能となったものであり、また今回から導入した部局枠予算配分方式が効率的かつ効果的な予算編成を促進したものであると考えております。このことにより、平成18年度以降、初めて合併特例債を活用した新市建設事業に振り向ける一般財源の確保ができたことから、見かけ上の伸び率にもかかわらず「身の丈にあった予算」となったものであります。

いずれにいたしましても、財政上の厳しさに変わりはないわけでありますが、新しいまちづくりの本格的スタートを切るべく、新年度の事業を整理いたしましたので、その主な取り組みについてご説明申し上げます。

第1 夢と希望のまちづくり

まず第1に、「夢と希望のまちづくり」であります。

市の青写真ともなります「湖南市総合計画」は、総合計画審議会において議論を深めており、先般基本構想案の骨子を取りまとめたところであります。胸中の成竹として総合計画審議会にお願いした戦略性と物語性の付与についても、「自立と協働」、「暮らしの創造」および「まちの基盤」という3つの視点と3つの理念、そして6つの目標に基づき、「湖南三驛」、「湖南三景」および「湖南三業」という3つの10年後の物語とともに、今後の対外的な活動指針としての広域行政の考え方を示されたところです。引き続き基本計画の策定につなげてまいりますが、総合計画の策定状況と相前後しながら各種計画を体系的に整備するとともに、それらの計画に沿ったまちづくりの骨格を組み立ててまいります。

また、まちづくりの基本となる都市計画や土地利用計画などの効果的な見直しを行い、市域内の人、モノ、情報の移動を容易ならしめる基盤基軸を、湖南市の10年後、20年後を見越して計画的に整備してまいります。東西軸の整備におきましては、国道1号バイパスの建設促進を国に要請するとともに、合併に伴い市の一体化を促進するための(仮称)三雲石部連絡道路の新設事業を進めてまいります。また、南北軸の整備として、県に対して菩提寺地先における県道竜王石部線の整備促進を求めるとともに、甲西橋の改築事業や安全対策として林道岩根線に電光掲示板設置を行ってまいりたいと考えております。

さらに、公共交通機関である鉄道軸に関し、新市建設計画に沿いまして、JR草津線三雲駅と甲西駅の周辺整備事業を本格化させるとともに、鉄道にアクセスするコミュニティバス路線の利便性を高めてまいります。このほか、生活道路や都市公園、上下水道など日常生活の安心安全のインフラについても計画的に整備をしてまいりたいと考えます。

第2 ものづくりの再生と育成

次に、「ものづくりの再生と育成」であります。

いわゆる「三位一体の改革」によりまして、国と地方の税財政構造は引き続き見直しが行われ、自治体の担う行政サービスが増大してきております。それに伴う財源の確保は地域間競争の時代において第一義的に自治体が経営上産み出さなければならず、そのために、税収の向上と雇用環境の整備を目的として市内産業の活性化を図ります。

これまで議論を深めてまいりました経済活性化会議を中心に、商業、工業、農業、観光・サービス業などに活力を取り戻すためのビジネスモデルの構築に取り組み、新たな企業の起業と進出を湧出するだけでなく、雇用を確実なものとするために就労支援計画を策定してまいります。また、合併により新たに4月1日に発足いたします湖南市商工会をはじめとする市内経済団体との緊密な連携を図ってまいります。

農業面では、甲西南部地区ほ場整備については地元の協力を得て計画的に進められており、農業経営体の基盤強化を支援するとともに、新たな特産品の開発販売などを合わせた持続的な農業形態のあり方を探ってまいります。さらには、昨年秋に多くの来客を迎えました「湖南三山」を中心にした観光事業について、他の歴史的資源やウツクシマツ、野洲川などの自然資源を最大限に生かしながら、湖南市のイメージアップを図ることなどを通じ、本市が門前雀羅を張ることのない魅力あるまちとなるように努めてまいります。

第3 若さと元気の人づくり

次に「若さと元気の人づくり」であります。

本格化する人口減少社会においては、将来的にまちの活力を維持できる人材の育成をめざさなければなりません。そのために、まず健康づくりに主眼を置き、「健康こなん21」計画を策定するとともに、個別予防接種の無料化などを含みます疾病予防推進事業を進めてまいります。また、子育て支援を充実させるために、市内9ヶ所目となります石部学童保育所の新設に取り組むほか、子育て中の親の交流を促し孤立化を防ぐために新たに1ヶ所「つどいの広場」を開設してまいります。

教育関係につきましては、後ほど教育長から教育方針が述べられますが、地域のさまざまな主体と連携した地域運営学校制度の実証を岩根小学校で進める一方、この制度の成果を市内で水平展開するための研究をしてまいります。学校施設の耐震化については、石部南小学校の大規模改造事業を行う一方、今年度耐震診断調査を行いました岩根小学校と下田小学校の実施設計と、新たに石部小学校の耐力度・耐震診断調査を実施いたします。また、通学路の交通安全に関しては、3年目となります旧東海道のグリーン着色をさらに進めます。生涯教育の関係につきましては、市内各種団体の自主的な活動を引き続き支援いたしますとともに、総合体育館をはじめとした文化体育施設の修繕や西庁舎の市民活動への開放などを進めてまいります。

第4 安心と愛情の暮らしづくり

次に「安心と愛情の暮らしづくり」であります。

ここでは、市民の安心安全を確保するため、計画や条例を整備しながら山積する諸課題に対応をしてまいります。まずは、直接的な安全の確保対策として、「武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする」ために、いわゆる国民保護法の規定に基づき、「湖南市国民保護計画」を策定いたしますとともに、防災面で「湖南市地域防災計画」を完成させ、市内全域に防災行政無線を張り巡らせるための調査を行うほか、防火水槽を新設するなど、計画的に市内の防災・減災施策を推進してまいります。

また、「湖南市地域福祉計画」や「湖南市障害福祉計画」を策定するとともに、「湖南市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」等に基づき、これまでの福祉施策の垣根を越えた地域福祉のあり方を検討してまいります。特に、改正介護保険法や発達障害者支援法、障害者自立支援法などに適切に対応できる体制を整備する必要性から、障害者の就労支援については、全国のモデルとなることをめざし、障害者が地域で安心して暮らせる支援に関する新たな条例を制定し、官民の協力体制を構築していきます。一方、医療施設については、広域対応も念頭に、適切な医療サービスの確保を目標として経営体制の見直しに取り組んでまいります。

環境問題に関しましては、下水道整備に伴う地域環境整備や費用対効果を念頭に置いた廃棄物処理対策を進めるとともに、環境保全条例や環境基本条例といった環境関連条例体系の整備や計画策定を順次実体化してまいります

第5 公開と参加の自治づくり

最後は「公開と参加の自治づくり」であります。

各学区、各区における生き生きとした自治の確立をめざすために、(仮称)まちづくり基本条例や(仮称)市民センター構想などの実現に向けた検討を進めるほか、地域で情報を共有するための携帯電話等情報発信事業を実施してまいります。また、旧甲西町域における住居表示の施行に関する調査に着手するとともに、地域のあらゆる人材の活躍を引き出すために、男女共同参画や国際化対応をはじめ、人権施策の一般的普及を図ります。

さらに、「湖南市行政改革大綱」を策定して計画的な行財政の効率化を行うほか、官民の役割分担においては、今回非公募といたしました指定管理者制度の優位性を生かせるような創意工夫をするとともに、民間で担える行政サービスの移譲に向けた検討を進めてまいります。こうした事業を通じて、市民に納得性の高い市役所づくり、自治づくりを実現してまいりたいと考えます。

おわりに

以上、平成18年度の市政運営にあたり、その方針の一端を申し上げてまいりましたが、改めて申すまでもなく、現在の社会経済状況が厳しい後退局面にあることは否定できない事実であります。そうした中、私ども政治と行政を預かる身にとっては、一瞬一瞬が正念場であるといってもよいでしょう。

19世紀の偉大なる社会学者であるマックス・ウェーバーは、その著書『職業としての政治』の中で、政治家に必要な資質として、「情熱」、「責任感」、そして「判断力」の三つを数えております。つまり、いくらこのまちを良くしたい、市民の暮らしを良くしたいという「情熱」があっても、それが無責任なものであってはならず、仕事への「責任」と結び付く必要があり、そのためには「判断力」が不可欠であると述べているのであります。中でも政治家の決定的な心理的資質であるとまで断言している「判断力」に関しては、「精神を集中して冷静さを失わず、現実をあるがままに受けとめる能力、つまり事物と人間に対して距離を置いて見ることが必要である」ということであり、距離感を失うことの問題性と、最も距離感を置くべき自分自身、すなわち「卑俗な虚栄心」に負けてしまうことがあってはならないと指摘しております。

平成18年度の当初予算編成におきましては、仕事の本筋に即して責任を果たせる範囲を見極めたうえで、「くらし安心、自立再生型予算」とさせていただきました。背伸びすることなく、持続可能性を追い求め、地道に将来のまちづくりにつなげていくための諸施策を円滑に遂行できますよう、改めまして議員各位ならびに市民の皆さまのご支援とご協力を心からお願い申し上げまして、施政方針といたします。

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