平成21年度湖南市施政方針

更新日:2019年07月01日

平成21年2月23日

はじめに

本日ここに、平成21年度の湖南市の予算および諸議案をご審議いただくにあたり、議長のお許しを得まして、私の市政に対する運営方針の一端を申し述べ、議員各位ならびに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

さて、麻生内閣総理大臣やオバマ・アメリカ大統領の登場と並行するように生じた世界同時不況はとどまるところを知らない勢いで進み、たった数か月でわが国の景況もガラリと変わってしまいました。ほんの半年前には、原油高や穀物高に苦しんでいたわが国経済も、今や外国市場の低迷と円高が直撃し、外需主導の製造業から拡がる裾野産業への負の連鎖が断ち切れないまま呻吟(しんぎん)し続けた結果、今月16日にはついに、昨年10月から12月期の国内総生産(GDP)がマイナス12.7パーセントの減少となったという衝撃的な速報値を内閣府が発表するに至りました。財政出動や金融政策を矢継ぎ早に打つべき中央政界は、前例にこだわる官僚内閣制とねじれ状況下における合意形成能力を失った国会により、まさにもうろうとした機能まひともいえる危機的な状況を呈しております。

そうしたなか、地方経済を牽引する企業の急激な業績悪化と、それに伴う期間工や派遣労働者の雇用止めをはじめとする社会的に弱い立場の人たちへの対応に追われ、市役所の窓口には相談にお越しいただく市民の皆様の列が続いております。また一方、大幅な税収減に加えて国や県の歳出切り捨てにより、地方の現場では、人的、財政的なバックアップが十分といえない厳しい状況に置かれています。

特に、湖南市においては、主力である第2次産業に影響が及び、外国籍市民をはじめとした勤労者の雇用や生活に不安を生じていることから、国や県の緊急対策と足並みを合わせながら対応をしていくことが求められます。

一方で、合併後5年目を迎えて、将来のまちづくりのための投資や公共の福祉の維持増進を図る必要がありますが、先に述べましたような厳しい社会経済状況を背景に、本市財政の歳入の根幹である市税が大幅な減収となるばかりか、地方交付税についても大きな減少が見込まれることから、財源の確保について強く意を用いていかなければなりません。そうしたことから、予算編成に際しては、経常経費については各部局が現場に近いところで独自の工夫を凝らして財源の有効活用を図りますとともに、計画に基づく大きな事業がいくつも動いているため、一旦事業全体を見渡してバランス調整をしてまいりました。特に、大幅な収支不足が見込まれる状況において、徹底したスクラップ・アンド・ビルドの観点から事業の見直しを行い、効果のある施策を重点的に進めていくことといたします。

『新市建設計画』を基礎とする新市建設事業も一定のめどが立ってまいりましたことから、新年度事業につきましては継続事業がその大半を占めることとなりますが、不要な市民負担をできるだけ低く抑える一方、市民すべてによるお互いの支え合いをもとに施策展開を図るように努めてまいりたい所存でありますのでよろしくお願いいたします。

それでは、平成21年度の重点的な施策について、ご説明申し上げます。

みんなで共に進めるしくみをつくろう

まずは、「人権尊重と自立・自助のまちづくり」であります。

市民主体のまちづくりについては、議会での審議状況を勘案して自治基本条例案を取り下げましたが、今後、その内容を精査してまいりたいと考えております。また、まちづくり協議会の設立が市内全域に及びつつありますことから、公共施設を核とした地域まちづくりをさらに深めていくための公民館のまちづくりセンターへの移行と、引き続きまちづくり交付金を通した自主的な地域コミュニティの育成を進めます。さらには、市民との協働によるまちづくりを定着させるために、市民活動団体の育成や市民とのタイムリーなより多くの情報共有をめざします。

人権尊重については、平成20年度に策定いたしました『人権擁護総合計画』に基づき、差別のない社会の実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。また、三雲会館や教育集会所を廃止して、新たに現在の三雲公民館に隣接して(仮称)三雲地域福祉交流センターを整備し、一体的な運用を図りますとともに、(仮称)石部西地域福祉交流センターの整備に向けた調査を行ってまいります。

多文化共生については、引き続き外国人集住都市会議への参加を通じて国や他の自治体と連携するとともに、湖南市国際協会などと協力して展開してまいります。特に、平成20年度に立ち上げた外国人市民会議を通じて、外国籍市民へのアプローチを進めてまいります。

うるおいのあるまちをつくろう

2点目は、「自然を活かし、自然と共生するまちづくり」であります。

本市が有する豊かな自然を守り、次代につなげていくための市民を挙げての取り組みが必要となってまいります。特に、これからの環境問題については、漠然とした環境ではなく、市民一人ひとりの“環世界”をどのように全体施策として政策統合していくのかの視点が不可欠となっており、引き続き環境審議会において議論をしている『環境基本計画』をとりまとめ、市民主導の環境保全意識の高揚をめざしてまいります。

自然環境の活用については、市民を山林に誘導し、健康増進だけでなく森林問題への意識啓発を進めるために引き続き里山エリアの再生を十二坊地域で行うほか、天然記念物ウツクシマツの保護を行ってまいります。循環型社会の形成に関しては、甲賀広域行政組合への負荷を軽減する必要もあり、引き続き資源ごみの分別収集や生ごみ処理機補助などを通じてごみの減量化と資源の再利用に取り組むほか、上下水道の整備については、老朽化する上水道施設の更新をはじめ、甲賀広域行政組合のし尿処理施設の大規模改修を視野に入れながら、本市の下水道整備計画の精査をするとともに、不明水や負担金問題という流域下水道事業における広域連携上の課題の検討にも着手してまいります。

また、平成20年度の「市民手づくりグラウンドゴルフ場整備事業」で拡張された野洲川親水公園グラウンドゴルフ場の芝生養生管理を市民主体で行いますとともに、広野川河川改修工事と並行し工事が進められておりました(仮称)どんどん公園や平成21年度に残事業を行う里山しょうらい公園など、身近な公園・緑地の整備につきましては、市民が自然にふれることのできるレクリエーションの場として、清掃や除草作業などは市民と協働で取り組み、災害時の避難場所となるオープンスペースとしての機能も視野に入れながらその活用を図ってまいります。

活気あるまちをつくろう

3点目は、「産業が集まり、人が集うまちづくり」であります。

平成20年度に策定いたしました『都市計画マスタープラン』に基づき、新たに湖南市全域が編入される大津湖南都市計画区域のなかで、本市を取り巻く経済・社会構造の変化や市民の価値観の多様化などを踏まえて、自然や歴史、文化、伝統などを活かした誰もが住みたくなるまちづくりを進めてまいりたいと考えております。住環境整備については、平成20年度に策定いたしました『市営住宅整備計画』に基づき、市営住宅の建て替えの準備をしてまいります。

合併関連事業として進めてまいりました甲西橋架替え事業、三雲駅周辺整備事業、甲西駅周辺整備事業などの諸事業については、引き続き計画的に進めてまいります。また、地方特定道路新設改良事業として進めてまいりました事業のうち、(仮称)三雲石部連絡道路新設事業は5月末を目途に供用を開始し、市道列結若狭島線道路新設事業につきましても平成22年度に完了する予定としております。

住居表示については、平成20年度は近江台区とサイドタウン区で実施し、現在はイワタニランド区において進めております。平成21年度も引き続き地元説明会などを行い、市民の皆様の理解を得ながら事業を進めてまいります。

農業の振興については、引き続き換地業務が本格化いたします甲西南部地区農業農村整備事業を推進いたしますとともに、集落営農ステップアップ促進事業などを展開します。商工業の振興については、平成20年度補正予算で実施いたします緊急経済活性化対策とあわせ、商工会などの関係団体との連携を図ってまいりますとともに、土地利用に関する計画の見直しや幹線道路網の整備が一定のめどを見せてまいりましたことから、新たに企業誘致を担当する部署を設けてまいります。雇用については、障害者の就労を支援するために情報を一元化するための障害者就労情報センターを開設してまいります。

ほっとする暮らしをつくろう

4点目は「生涯を通じた安心と健康のまちづくり」であります。

少子・高齢化の進展や、戦後最悪といわれる不況による雇用・住宅・生活の不安がこれまでの社会福祉制度の根幹を大きく揺るがしております。このことから、住民に最も身近な自治体として、市民の皆さんと協力し、地域の実情に応じたきめ細かな取り組みを行い、市民一人ひとりが健康で安心な生活を送ることができるまちづくりを推進することが重要と考えております。

特に、平成20年度に策定されました『障がい者の支援に関する基本計画』、『高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画』をはじめ、『地域福祉計画』を頂点とする『次世代育成支援行動計画』、『健康こなん・食育推進計画』といった健康福祉分野の計画すべてが湖南市単独の計画となりましたので、これらの計画の実現へ向けて、市民の皆さんと一緒に安心していきいきと生活できる社会に向かって努力してまいりたいと思います。

そこで、次の世代に対する支援といたしまして、妊婦健康診査公費負担の拡充を行いますほか、滋賀県が財政の悪化を理由に削減をもくろんでおります福祉医療費助成制度について、県が実施主体の統一された制度として転換するように引き続き強く要請する一方、県の助成制度が改善されるまでの当面の間の緊急避難的措置として、小学校就学前までの子どもの通院にかかる自己負担金と中学校卒業までの子どもの入院にかかる自己負担金についての助成を行ってまいります。また、学童保育所や保育園等についてのハード面の整備を進めるほか、複雑多様化する相談に対応するため家庭児童相談室を充実してまいります。

一方、高齢者の保健福祉については、医療保険制度との整合を図りながら先ほど触れました乳幼児医療費の新規助成に関する財源捻出のために68歳、69歳老人に関する助成制度を段階的に見直す一方、介護老人福祉・保健施設サービスを充実するとともに、地域での認知症への対応を注目しながらも、介護保険料については低所得者への軽減措置を含め基準額の引き下げをしてまいります。

健康づくりや医療の充実については、引き続き公立甲賀病院組合における病院移転新築事業を進めるほか、各種がん健診の受診率向上を図りますとともに、国民健康保険特別会計の財政安定化に取り組みます。

障がい福祉については、県補助金の交付金化により歳入が削減されますが、新たに発達障がい者ケアマネジメント支援事業に取り組むほか、順次進めているユニバーサルデザイン化に関して、平成21年度は西庁舎のトイレ改修を行ってまいります。

いきいきとした暮らしをつくろう

5点目は「誇りとなる市民文化を創造するまちづくり」であります。

教育の内容につきましては後ほど教育長より教育方針演説がありますので、割愛いたします。

湖南市がこの先、ひとつのまちとしてアイデンティティを獲得していくためには、市民一人ひとりが地域に愛着を持ち、身の回りを見つめ直していくことが必要であり、市としてはそういった場所や機会の整備が必要であると考えております。

今年10月1日に、市制5周年を迎えますことから式典の開催やNHKの夏期巡回ラジオ体操会への参加を予定しております。周年事業は、今日までの市政を振り返りこれまで築いてきたまちの基盤を再確認するとともに、将来のまちのあり方を見据える機会であります。市民の皆様の理解を得ながら、5年の節目を意義あるものとしていきたいと考えております。

学校施設は、児童生徒等が一日の大半を過ごす活動の場であるとともに、非常災害時には地域住民の応急避難場所としての役割を果たすことから、その安全性の確保は極めて重要と考えております。平成20年度中にすべての学校施設の耐震診断が完了する予定でありますので、今後はこの結果に基づき、耐震改修が未完了の施設について、早期の耐震化を進めてまいります。平成21年度におきましては、岩根小学校の改築・大規模改造事業が継続となりますほか、三雲小学校、水戸小学校における耐震補強事業を新規に行ってまいります。

明日を拓くしくみをつくろう

最後に「効率的・効果的な行財政システムづくり」であります。

限られた財源・人材のなかで質の高い行政サービスを望む多様な住民ニーズへの対応しなければならない現状において、客観的な評価の結果から、限られた財源・人材を活用した効率的・効果的な施策・事業の選択を行うとともに、職員の意識の向上を図ることなどが必要と考えています。

平成20年度に導入いたしました統合型マネジメントシステムにより、主要事業の進捗状況、行政評価結果および業務の手順を分かりやすい形で公開することにより、市民に対する説明責任の向上を図るとともに、事業の進捗や見直しの判断の客観性を高め、一層効果的かつ効率的な新しい行政経営の基盤を創造してまいります。

また、より質の高い住民サービスを持続的に提供するために必要な財源の確保に関しては、引き続き税等の収納率の向上に努めるほか、超過課税や目的税の活用などの歳入の拡大と保育園などの民営化や重複施設の整理などの歳出の削減について、将来世代への負債を増やさないよう、聖域のない議論を深めてまいりたいと考えます。

そのほか、京都議定書の目標を市役所としても達成するため、『地球温暖化防止実行計画』を策定していきます。

おわりに

国においては、麻生内閣の支持率下落には歯止めがかからず、日本テレビが今月15日に明らかにした世論調査結果によると、ついに10パーセントを割り込んだそうであります。また、政府は平成21年度予算の成立を待たずに同年度の補正予算編成へ向けた追加経済対策の策定に着手する方針のようでありますが、総理自らが強調した経済政策の“スピード感”よりも政策のブレが強く感じられるところであります。

一方、滋賀県においても、税収の大幅減を背景に対話を経ない政策決定が重ねられ、なかでも栗東市に対する支援金という名目の約16億円の「賠償金」については、県民全体の負担の中から支払われるという事実に注目をしておく必要があります。幸いなことに、県は乳幼児を含む福祉医療費の削減については方針を撤回いたしましたが、一方的な少人数教育や補助金の削減もあり、引き続き自治のあり方を県と市町が粘り強く議論をしていかなければなりません。

そうした状況のなか、基礎的自治体である各市町村においては、限られた財源のなかで緊急的な雇用対策や離職者の居住確保対策に加え、国の平成20年度第2次補正予算に呼応した補正予算の編成や臨時議会の開催など事業実施に向け全力で取り組んでいるところであります。

湖南市においても『定員適正化計画』に基づく職員数の減など引き続き人件費の削減を図っているものの、国庫支出金や県支出金の減少、合併関連事業の本格化による投資的経費の拡大、景気悪化に伴う社会保障費の増大などにより、財政の硬直化はますます高まっていると考えられます。しかし、福祉医療費や学校施設の耐震化など、市民の命や安全を守るための施策や経費を軽々に削ることがあってはならないと考えておりまして、全体の財政バランスを調整しながら、『行政改革大綱』や『集中改革プラン』の内容を着実に実施し、地方分権時代にふさわしい財政基盤を確保して、広く市民全体の利益をめざしたまちづくりを進めてまいりますので、議員各位ならびに市民の皆様のご支援とご協力を心からお願い申し上げまして、平成21年度の施政方針といたします。

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