平成21年湖南市議会定例会 一般質問 「衆議院議員選挙後の国の体制が当市に与える影響について」の市長答弁

更新日:2019年07月01日

 平成21年9月湖南市議会定例会の一般質問に対し、次のとおり答弁しました。
 民主党政権になったばあいの本市への影響についてのお尋ねであります。答弁は簡潔明瞭に、を心がけてまいりたいところですが、世界同時金融恐慌の引き金となったリーマン・ブラザーズが破綻して今日で丸1年、政権交代によりわが国の国のかたちが大きく変わるときに当たり、本市への影響も幅広く、大きなものがありますので、失礼をいたしましていささか詳しくご答弁を申し上げたいと思います。
 まずは、明日、衆参両院において首班指名選挙が行われますが、8月30日に執行されました第45回衆議院議員総選挙の結果からも、480議席中、単独政党では戦後最高の308議席を占めることとなりました民主党代表の鳩山由紀夫氏が、参議院においてもこれまでの野党が多数を占めておりますだけに、内閣総理大臣に選出されるものと見て間違いないと考えております。スピード感をもって内閣を組織するという意気込みを見せておりますことから、明日中に組閣を終え、天皇陛下の認証を得て、正式に鳩山内閣が発足することとなると予想されます。
 この鳩山内閣が平成5年に成立した細川内閣と異なりますのは、国民が直接選択した結果成立するという内閣であるという点にあります。細川内閣の場合は、選挙後の離合集散で非自民連立政権がつくられましたので、ガラス細工のようなものであったと思いますが、今回はそうではないということです。

 鳩山民主党は、「官僚丸投げの政治から、政権政党が責任を持つ政治家主導の政治へ」ということを政権構想5原則の最初に掲げておりまして、これからの政策立案は官僚ではなく政治家が責任を持って行うということを宣言しております。また、原則の2番目には「政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ」と主張しておりますが、このことは、自民党の政策決定の仕組みの特徴として、「『政官混合体』が政策を決定し、主導するシステム」であり、「自民党内における主要な政策決定単位が、派閥から政務調査会の部会や調査会に」、そして『族』議員へ移行していったという指摘があります。「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」、そして「政権交代なき政党政治」といわれましたように、政府が政策を決定するのではなく官僚と党政調が政策決定し、閣議は「サイン会」とも揶揄されたように署名と花押を記入するだけという追認の場になってしまっていたことへのアンチテーゼでもあるともいえます。これまでは、「議院内閣制」の運用として、有権者国民が選んだ議員が有権者国民の意思通りに内閣を選び、政策決定するのではなく、派閥による内閣総理大臣たる自民党総裁の選出や政官混合体による政策立案と党政務調査会における政策決定という権力の二重構造など、有権者国民の意思が直接国政に反映されにくいシステムでありましたが、「民主党の政権運営のイメージ」草案からも、政策は内閣の閣内で議論して決定するということですので、有権者国民が選んだ議員の多数が有権者国民の意思通りに内閣の首班を選出し、その内閣が国会とともに有権者国民に対しても直接責任をもって対応するものであり、昨日の事務次官会議が最後の会議であるといわれるように、本来の「議院内閣制」が確立する最初の一歩ではないかと考えております。
 そこで、民主党のマニフェストについてでありますが、今回の選挙は、議員ご指摘のとおり、政権選択選挙として、各政党があらかじめ政権公約を公表し、それに対してさまざまな団体が政策の実効性などを検証するなど、過去に例がないほど注目が集まっておりました。そのことは、今回の選挙の投票率の高さからも窺えますし、政策の内容だけではなく、政策決定過程が大きく変わる可能性があることから、市といたしましても各党のマニフェストを分析し、市への影響等を把握するよう関係部局に指示し、準備に努めていたところであります。そのうち民主党のマニフェストにつきましては、現実に308議席という議席数の重みとともに、政権交代が実現することとなりましたことから、その本市に及ぶ影響について、主な点を見てまいりたいと思います。

 まずは、市政への影響ですが、民主党の政策は、議員ご指摘のとおり「国民の生活が第一」としておりまして、概して申し上げれば、社会福祉優先、社会保障充実でありまして、このように生活に密着した政策は、基礎的自治体である市町村が実際の実施主体となるものであり、大きな影響が出てくるものと考えております。
 具体的に検証してまいりますと、政策各論の大きな1点目として『ムダづかい』という標題で括られており、最初に1「現在の政策・支出を全て見直す」という項目で「自民党長期政権の下で温存された族議員、霞ヶ関の既得権益を一掃する」「政策コスト、調達コストを引き下げる」としております。明日の内閣の発足に伴い、総理指示や初閣議で国家戦略室や行政刷新会議を設置していくこととしておりますが、こうした機関によるムダ見直しの結果として、政府調達の方法を見直してくることになりますので、市といたしましても公共調達の方法を見直していく必要があろうかと考えております。また、「不要不急の事業、効果の乏しい事業を凍結・廃止する」としておりますが、現在のところ、市内においては不要不急の国事業はありませんので、大きな影響はないものと見ております。ただし、後に述べますように、道路関連財源や補助事業などの見直しに伴う影響は大きく出てくることになると予想されます。
 3「国が行う契約を適正化する」という点については、先ほど申しましたように、「政府調達方法の見直しを参考に、公共調達に関する情報公開の拡大などの検討も必要になってこようと考えておりますし、外部有識者による入札・契約監視委員会の設置など契約の公正さを担保するためのしくみづくりが必要であろうと思います。
 また、4「公務員制度の抜本改革の実施」に関しては大きな影響が生じるものと予想されます。マニフェストにおいては、国家公務員の総人件費2割削減などとしておりますが、民主党政策担当者がテレビで「生首は切らない」と発言しておりますように、最終的には地方自治体に移管する考えであろうと推測されます。その場合、専門性を有する人材を確保できる機会ではありますが、もしも、本市が任用するにあたりましては、当人が本当に専門性を有しているかの確認が必要であろうと考えますし、その一方では、定員増による人件費の増加につながる可能性があり、一長一短であろうと思います。しかし、当面は都道府県を対象と考えていると思われますので、注視してまいりたいと考えます。なお、道州制を導入してそこに国家公務員を移管するのであれば、地方分権に逆行する取り組みであろうと思います。さらには、公務員の労働基本権を回復するとされておりますが、昨日の京都新聞が報じましたように、同時に人事院を役割縮小するなどの制度改正が予想されることから、これまで労使交渉の目安となってまいりました人事院勧告の存在が不安定となり労使交渉が長期化する可能性がありますとともに、地方公務員法の改正により労働基本権をどの程度付与する制度設計になるかにもよりますが、ストライキによる市民サービスの低下などにも気を払っていかなければならなくなるかもしれません。

 8「税金の使い途をすべて明らかにする」では、「予算編成過程を原則公開するとともに、執行を厳格に管理する」とされておりますが、選挙直後の8月31日が締め切り日となっておりました平成22年度当初予算の概算要求について、民主党幹部から凍結や見直しの発言が相次ぎ、今月下旬にも概算要求基準の廃止を閣議決定する見通しとされております。一方で、自民党政権のもとで編成された平成21年度補正予算に関して、すでに支出済みのものが多く、これへの対応が注目されます。また、平成22年度予算編成はまったく白紙からの編成となりますことから、国の予算編成が年度内に間に合ったとしても、地方自治体に関する方針提示が遅れますと、本市も含めて多くの自治体で骨格予算を編成せざるを得ない可能性も否定できないところでございます。
 また、9「公平で、簡素な税制をつくる」という項目につきましては、新しい財務大臣の下に新しい政府税調を設置して検討する方針であると報道されておりますが、これまではごく限られた専門家でなければ読み込むことができなかった租税特別措置法による例外規定が検証され、廃止されるということですので、公平、簡素、中立とされます税の3大原則のうち、公平、簡素の2つが是正されることとなります。ただし、地方財源問題とあわせて、税源移譲についても積極的に議論されるべきだと思いますし、いずれにいたしましても課税権については憲法の規定により法律で規定されますことから、国会での議論を注目していかなければならないと考えます。また、これにともなう事務負担が考えられるところでございます。
 次に、大きな2点目として『子育て・教育』でございます。10「出産の経済的負担を軽減する」としております点につきましては、今年の10月から42万円となります出産一時金を見直し、出産時に55万円までの助成を行うこととされておりますが、これについては国民健康保険だけでなく医療保険者が社会保険事務所や健康保険組合と多岐にわたりますことから、財政措置は国が必ず行っていただくべきものであると考えております。
 何かと話題となっております11「子ども手当」の創設でございますが、湖南市においては対象者が9千人で、1人あたり31万2千円の支出となります。平成22年度においては半額支給となる見込みですが、金額面での負担が想定されるだけではなく、恐らく支給については市町村の事務となることが予想されますので、先週、厚生労働省が民主党に論点整理を提出したように、システム改修や事務負担の増加の可能性も十分に考えられます。このことについて、同時に行い財源に充てるとされておりました配偶者・扶養控除のカットは先送りされる見通しであるという報道がなされております。

 12「公立高校の無償化」につきましては、平成22年度から実施とされておりまして、このことにより市が実施しております奨学資金の歳出が不要となると考えております。一方で、国庫負担にあわせて地方負担を求められるだけでなく、支給事務を市町村に押しつけられた場合には負担が増えると見込んでおりましたが、昨日や今日の読売新聞によりますと、同じような懸念から文部科学省が都道府県などを通じた間接給付とすることで民主党と調整をしているとのことです。また、同じく平成22年度から私立高校生のいる世帯に年額12万円、低所得世帯には24万円を助成するという点についても、先ほど申し上げたことと同様の課題が懸念されるところでございます。
 13「生活保護の母子加算復活」につきましては、民主党は関連法案を10月の臨時国会へ提出する方針のようでありますが、市内の対象者は16世帯となっております。また、父子家庭にも児童扶養手当を支給するとされておりますが、新制度創設に伴う事務負担が増える可能性があります。ちなみに現在の福祉医療費助成制度での父子家庭対象者が45世帯ございます。さらに、「5年以上の受給者等を対象に行っている児童扶養手当の減額制度を廃止する」としておりますが、減額措置はすでに昨年4月から始まっており、本市の対象者は1人であります。ひとり親家庭への保育所への優先入所にはすでに取り組んでおりますが、セーフティネットとしての総合的な機能確保の具体策が見えてまいりませんし、それに伴う市の財政的な負担も不明でありますことから、引き続き注目してまいりたいと思います。
 14「保育所の待機児童を解消する」については、毎年の定期入園申し込みを受け付ける際に希望のあった市民の皆さんは現在のところ全員入園していただいております。それ以降に申し込まれた0歳から2歳児については、別の園を紹介したり少しお待ちいただくこともありますが、マニフェストにあります余裕教室や廃校を利用した認可保育所の増設は難しいと考えております。また、「保育ママ」の増員につきましては、4日の京都新聞が報じたように、大津市が来年度から実施の方向を表明しておりますが、本市においてはすでに同様のファミリーサポートセンターが動いておりますので、制度詳細が判明して必要があれば対応してまいる可能性が考えられます。
 大きな影響があると考えられますのは教育制度でございます。15「全ての人に質の高い教育を提供する」という点につきましては、まずは学校建築計画で石部小学校と甲西中学校の全面改築を位置づけておりますことから、施設整備面で国の制度改革の動向を見守ってまいりたいと考えております。民主党の政策が社会的弱者へ比較的手厚いものとされますので、外国籍市民や生活困窮世帯など全ての子どもに対する教育環境の整備改善を期待しております。
 一方、教員の資質向上のために教員免許制度を見直し、教員養成課程を6年制にするとしておりますが、長期的には教員の質を高める施策ですが、短期的に現在の医師臨床研修制度のように現場での必要教員数の確保が可能となるかの不安がございます。昨日の産経新聞や朝日新聞では、民主党幹部が教職員免許法の改正案を来年1月の通常国会に提出する考えを示しています。また、教員を増員するということも約束されていますが、現行では義務教育教員の給与については国の負担は3分の1でしかなく、残りの3分の2については都道府県の負担となっておりますことから、いくら国で増員するとしたとしても、例えば、滋賀県で申せばこれ以上財政的な負担はできないでしょうから、絵に描いた餅となりかねないという大きな欠陥がございます。

 そのほか、学校に「学校理事会」を設置することについては、すでに岩根小学校で設置済みですし、各小中学校には学校評議員会がございますので、移行は容易であると考えます。現在の教育委員会制度を「教育監査委員会」に衣替えする点につきましては、制度の詳細が不明ですのでコメントのしようがございません。
 大きな影響のもう一つは、3点目の『年金・医療』にございます。それが21「後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険を守る」という項目です。「後期高齢者医療制度と関係法を廃止する、廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する」としておりますが、後期高齢者医療制度につきましては、もともと国民健康保険から分離した時点でさまざまな軽減策や支援制度を付加しておりますことから、制度廃止により国民健康保険にそのまま戻ってきた場合には、これまで国民健康保険が担ってこなかった負担が増えるわけですので、ただでさえ厳しい国保財政を大きく圧迫することになります。「廃止に伴う国保の負担増は国が負担する」としておりますが、この点、制度廃止に伴う混乱を事前に十分回避できるだけの制度設計が必要であります。今月7日にはNHKで民主党幹部が「1~2年の間に廃止したい」と時間がかかることを示しています。京都府の後期高齢者医療広域連合は早速、制度堅持と財源確保などの改善策を求める決議を行いました。
 このことと関連しますが、次の「被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る」とした点につきましては、保険財政の基盤安定のため、統合後の地域保険は国または都道府県で対応されることが望ましく、統合の実現自体については歓迎したいと思います。
 22「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する」については、社会保障費2200億円削減方針を撤回していますが、麻生内閣のもとにおいてすでに「安心・安全を確保するために社会保障の必要な修復をする」と「経済財政改革の基本方針2009」、いわゆる骨太方針に盛り込まれておりました。しかし、これは単年度限りの措置であり、社会保障費削減方針の撤回は歓迎されるべきことですし、特にそうしたナショナルミニマムの確保は国の責務としてしっかりと果たしていただきたいと思います。また、医師養成数を1.5倍にするとしておりますので、地域医療崩壊の防止につながり、石部医療センターや公立甲賀病院での医師確保に効果が期待されます。さらには、平成21年度補正予算の見直しに絡みますが、公立甲賀病院の移転新築に関しまして、医療施設耐震化臨時特例交付金による災害拠点病院への支援を見直さないように、公立甲賀病院組合管理者として、早速民主党本部へ要望をいたしておきましたが、先ほどの昼休みに、「本日午前に滋賀県から10億円余りの交付金内示があった」との連絡を甲賀病院から受けたところです。

 23「新型インフルエンザ等への万全の対応、がん・肝炎対策の拡充」においては、感染症予防法に基づき、国が責任を持って体制の充実を計っていただきたいと思いますし、関連法制を全面的に見直すとしておりますので、その動きを注視したいと思います。がん検診の受診率向上については、国において啓発や検査態勢の充実がされるとともに、市町村に対する財源手当と地域医療機関の整備が不可欠になると考えられます。また、「高額療養費制度に関し、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図る」としておりますが、議員の皆さんもご承知のとおり、高額療養費制度が国保財政を圧迫しておりまして、これ以上高額療養費制度を充実するのであれば、国民全体で負担される制度として明確に制度設計をし直していかなければ難しいのではないかと思われます。
 25「介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる」という項目につきましては、ヘルパーなど介護労働者の賃金を引き上げるということは、人員の確保による良質な介護サービスの提供をめざしてはおりますが、介護保険給付費が上昇することにつながりますので、市の負担も増加し、市財政への影響が予想されます。また、制度改正については、サービス利用者への周知事務やシステム改修などの発生が予想されますし、第1号被保険者の介護保険料の算定にも影響が出てまいります。現在、湖南市では平成21年度からの『介護保険事業計画』を策定したばかりですが、この計画内容の見直しが必要になってまいります。
 26「『障害者自立支援法』を廃止して、障がい者福祉制度を抜本的に見直す」ということについては、現状として市が4分の1を負担しているものの、抜本見直しの内容が不明確で困惑しております。「障がい者総合福祉法(仮称)」を制定する方針ですが、制度の谷間をなくすとしておりますので、サービス対象者が発達障害や高次脳機能障害、難病、内部障害などに拡大され、増加することに伴い、扶助費、すなわち一般財源の持ち出しが増加する可能性があります。サービス提供の方式が抜本的に変わるため、平成21年度からを対象とする策定したばかりの『障がい福祉計画』についても見直しが必要となってまいります。
 大きな4点目は『地域主権』であります。27「霞が関を解体・再編し、地域主権を確立する」については、「行政刷新会議で全ての事務事業を整理し、基礎的自治体が対応可能な事務事業の権限と財源を大幅に移譲する」とされておりますが、事務事業の移譲よりも財源確保のほうが第一なのではないかと思います。とくに政省令に委任され、有形無形に基礎的自治体を縛っている規制を見直していただくことが必要であると考えております。そういう点で、本当の基礎部分だけ国がスタンダードを定め、後は自治体が条例で工夫できるようにしてもらわなければ、国と地方の完全な対等・協力関係の実現は難しいと考えます。
 また、国から地方への「ひもつき補助金」を廃止し、基本的に地方が自由に使える「一括交付金」として交付するとされておりますが、ナショナルミニマムの確保は本来的な国の責務でありますので、義務教育や社会保障に関する費用の必要額を確保できないのであれば納得することはできません。ナショナルミニマムの議論を国で十分に行っていただいたうえでの地方分権でなければ、極端な地域格差がまたぞろ出てきて、生活難民が発生することを警戒してしまいます。また、財源移譲につきましては、「一括交付金」よりも税源移譲で対応されるべきであると考えております。

 29自動車関連の暫定税率を廃止するという点については、基本的には国税、都道府県税の問題に捉えられがちですが、市におきましても譲与税と自動車取得税交付金が削減されることになりますことから、代替財源の措置が必要不可欠であると考えております。また、道路関連財源を活用した交付金・補助金制度が廃止となると、インフラ整備計画に影響が大きく生じてまいります。財源配分次第では、道路整備を進められなくなる可能性があり、国会における制度設計を注視する必要があります。
 31農業の「戸別補償制度」に関しましては、現状でも甲賀農業協同組合や民間事業者を通じて個人販売は可能となっておりますが、個人補償を行うとなりますと、給付を行うために市の事務負担が生じる可能性があります。また、間伐等に関する「森林管理・環境保全直接支払制度」の導入についても、現状では甲賀郡森林組合を中心に各生産森林組合が補助金を受けていますが、個人払いとなれば事務負担が生じる可能性があります。
 大きな5点目は『雇用・経済』でありますが、まず35「中小企業向けの減税を実施する」とありまして、法人市民税率が下がりますと市にとりましては税収減となりますことから、代替財源が必要となります。そのほかの雇用関連の項目につきましては、ほとんどが国ないしは都道府県の仕事でありますが、40「最低賃金を引き上げる」という項目の「貧困の実態調査を行い、対策を講じる」とされている実態調査の事務負担が生じる可能性があります。また、大幅な賃金アップが中小企業者の経営を圧迫したり、雇用抑制につながらないかを見極める必要があります。さらには41「ワークライフバランスと均等待遇を実現する」という点については、市役所現場にも正規・非正規の待遇に均等待遇が求められてくる可能性がありますが、一方で集中改革プランに基づく正規職員の削減が求められており、集中改革プランの見直しや財政措置を含めた抜本的な対応を国が行う必要があると考えます。
 42「地球温暖化対策税の導入」については、「地方財政に配慮しつつ」の内容が不明ですが、産業活動への付加となれば、法人税収の減少につながる可能性があります。
 大きな6点目は『消費者・人権』でありますが、47「消費者の立場に立った行政を確立する」のなかで、相談員の待遇を抜本的に改善するとしておりまして、相談員を正職員化するとなれば、一般財源の負担が増えることになり、これへの財政措置が不可欠となります。
 大きな7点目の『外交』につきましては、55核兵器廃絶に関し、平和市長会議などを通じた取組みが必要となります。
 その他、憲法問題に関しては、連立与党を組む社民党が衆参両院の憲法調査会の凍結を要求しておりますことから、議論が進展しないのではないかと予想されますが、一昨日のラジオ放送では、鳩山代表が地方分権の観点から改正は必要との認識を示しております。
 一方で、消費税については、政権担当期間中は5%に据え置くとの連立3党合意がございますので、財源確保に難しさが出てくるのではないかと心配いたします。

 こうしたことなどを踏まえながら、ご質問の2点目になります「メリットとデメリットについて」でございますが、極言いたしますと権限と財源の問題に行き着くのではないかと考えております。本市の財政状況は、今般の経済危機によりまして、法人関係を中心とした税収が予想を超えて落ち込んでおりまして、一方、社会保障関係経費や公債費などの義務的経費が、いわゆる「三位一体の改革」による影響で、より深刻な状況になってきております。

 こうしたなか、民主党マニフェストには、「地域主権」が掲げられ、基礎的自治体が対応可能な事務事業の権限と財源を大幅に移譲する一方、「ひも付き補助金」を廃止して地方が自由に使える「一括交付金」として交付することになっており、地方の一般財源の拡充がなされる見通しです。
 必要な財源の総額が確保され、マニフェストにある国の義務付けや枠付けの見直しが実現すれば、湖南市にとっては大きなメリットとなると考えられますが、必要な財源として民主党は徹底したムダの排除と特別会計等のいわゆる「埋蔵金」の活用を掲げており、正直なところ、これにより地方向けの税財源の総額が確保されるのか不明なところがございます。また、公共事業などの補助金は、財政力の弱い自治体に手厚く配分する方針も出されており、比較的財政力の強い湖南市にとってメリットにつながるかは判明しません。
 ただ、申し上げられますことは、これまで地方分権、地域経営といわれながら、地域だけで完結して財政運営をするには、大きな抜け穴がたくさん開いていたということで、地方の財政規律を失わせるそうしたひも付き補助金が廃止されれば、自治体の財政運営はさらに自律性を求められるということになります。
 例えて申しますと、地域内に道路がほしいと思ったとき、これまでは国にお願いする、県にお願いする、そのためのパイプが必要だ、そのパイプを使って、「どうしても必要」というものだけでなく、「どちらかというと必要かも」というようなものまで要望して、声の大きいところが獲得をしてくるという「利益山分けシステム」でありましたが、これからは自治体の身の丈にあった財政運営が求められ、本当に必要な道路は爪に灯をともす思いでお金を貯め、減価償却を感じながら積み立てを行い、借入返済計画をしっかりと立てて、資金調達の目途がたって初めて着工できるということになりますので、本当に必要な道路しか造ることができなくなるということです。

 財布の中身や通帳の残額、給与振り込みの計画やローンの管理など、歳入に見合った歳出を図るための賢い予算編成ということが求められてくることになります。そのためには、市民が納得できる予算をつくりあげ、ムダなく執行するということが大事になりますので、過去にご協力をお願いした議員の皆さんにも予算編成を手伝っていただくというようなことも、市民の皆さんに対しては今後必要になってくるものと考えております。
 さらには、まちづくり協議会を通じた地域での自主的な社会貢献活動が活発化していけば、民主党の主張する「一括交付金」のような取組みが全体として効果を現してくるものと考えられます。
 最後に、財源問題について触れますと、これまでかなり不安を煽られてきております。子ども手当や高速道路無料化、生活保護母子加算復活や社会保障費2,200億円削減撤回など、必要とされる財源が無いじゃないかといわれてきました。しかし、これは従来型の「積み上げ方式」の考え方でありまして、他の施策に全て充当したあとで民主党政策に充てる残り財源がないといわれているものであります。ところが、大きくシステムが変わってまいりまして、実は今までの常識が通用しなくなってまいる点に注意が必要です。つまり、「トップダウン」の予算編成となり、国家戦略局のたてる基本方針の下、民主党が主張する政策に最初に財源が充当され、残り財源に行政刷新会議で精査された従来からの施策を優先順位をつけて財務省が充てていくというかたちにガラリと180度変わるわけであります。ですから、民主党の政策は財源がなくて実行できないじゃないかと高をくくっておりますと、滋賀県がなりふり構わず施策を切り捨ててきているように、他の施策をいつの間にか平然と国に削減されてしまう可能性がありますので注視しなければならないと考えております。
 いずれにいたしましても、具体的なメリット、デメリットを論じるには、明日の内閣発足を待ちまして、もう少し具体化の方策を見てからでないと申し上げられないと考えております。市といたしましても、毎週次長級の会議でモニタリングをしておりますので、こうした動きに取り残されないようにしてまいりたいと考えております。

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