平成23年度湖南市施政方針

更新日:2019年07月01日

平成23年2月25日

はじめに

本日ここに、平成23年度の湖南市の予算および諸議案をご審議いただくにあたり、議長のお許しを得まして、私の市政に対する運営方針の一端を申し述べ、議員各位ならびに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

流動化する世界

わが国を取り巻く世界情勢は、流動化を加速しています。いわゆるリーマン・ショックからの立ち直りを進めるアメリカは、金融緩和による景気浮揚を狙うとともに、わが国の頭越しに中国との連携を深めようとしています。財政不安を抱えるEU諸国がドイツを除いて引き続き不安定な状況にあるのに対し、中国・インド・ブラジル・南アフリカなどの新興国が世界経済を牽引する立場となりつつあります。しかし、安全保障に目を移しますと、中国やロシアとわが国との関係は海の国境を挟んで冷え込み、戦後外交の基軸であった日米関係も普天間問題を中心に崩れ始めるとともに、朝鮮半島では砲撃事件をきっかけに北朝鮮の支配体制移行も含め、東アジア情勢を中心に緊張が高まっています。GDPでわが国を抜き世界第2位となった中国も国内には深刻な格差が拡大し、ネットを通じた民衆運動と人民解放軍の動きに不確実性を抱えてきました。昨年4月、世界のインターネット通信の15パーセントが18分間にわたり切断された事件は中国企業によるネット通信の乗っ取りであったとアメリカ議会に報告があり、世界各国から警戒されています。昭和54年のイラン革命を髣髴とさせる今回のアラブの混乱は、スエズ運河の安全航行とイスラエルの安全保障に暗い影を落としました。中東の石油に大きく依存する貿易立国であるわが国としては、エネルギー政策に不安を抱えるだけではなく、周辺諸国との競争上、TPPへの参加の可否を喉元に突きつけられるなど、流動化する世界情勢に振り回されるばかりであり、ウィキリークスで暴露されたアメリカの外交機密電報にあったとされる“日本人は肥満した敗者で、指導層にビジョンが欠落し、愚かで質が悪い”という厳しい指摘どおり、長期的視野に立った戦略的かつ機動的な対応が強く求められています。

漂流する日本

そうした剣が峰にあるわが国は、一昨年の政権交代後、国政が混乱を続け、国民生活は言い表せない閉そく感で覆われています。政治とカネ、失言大臣、影の総理、事実上の指揮権発動、大阪地検証拠改ざん、与謝野大臣の野党からの入閣など、一向に理性的な議論が始まることのない国会では、国民生活より政権抗争が優先されており、国益が損なわれつつあります。特に普天間問題で鳩山内閣が総辞職し、菅内閣で臨んだ参議院議員通常選挙で与党が敗退したことで、ねじれ国会が現出し、過去に民主党が自公政権を追い込んだ戦術がそのまま野党の戦術とされていることは歴史の皮肉としか言えません。しかも、自公政権下で抜本的な対策をとるとしてきた税と社会保障に関する改革期限の到来が目前となり、その一体的な改革に準備不足のまま一挙になだれ込もうとしております。政府予算編成においても、歳入における税収を国債発行が上回る財政規律の欠如が、わが国の国債格付けを引き下げ、それに対する菅総理のコメントがわが国政府に当事者能力が欠けていることを如実に裏付けてしまいました。不景気の中で突然提示された大衆増税は経済の拡大再生産ではなく非生産部門に投じられようとしています。財源不足のまま推進される子ども手当に地方負担を一方的に導入した手法に全国市長会をはじめとした地方六団体は猛反発していますが、国と地方の協議の場の設定を含めた地域主権三法案はいまだ成立していません。法律の枠内での自治を委ねられている首長が本来の自治に専念せずに国政に色気を出したりするのは、国政が混乱すればこそであります。海上保安庁のビデオ流出、警視庁外事課の国際テロ捜査資料流出など国の情報管理の杜撰さも露呈しました。こうした政治の劣化を受け、わが国の経済は新興国やアメリカ経済が好調であるにもかかわらず大きく改善されることがありません。米中との通貨戦争に負けて実力以上の円高を余儀なくされ、設備投資が低調に推移し、大学新卒者の就職率が超氷河期のままとなっているわが国は、海図もないまま絶海を漂流し続けています。

停滞する滋賀県

滋賀県においては、第2期嘉田県政が始まりましたが、改革は目立って進んでおりません。鳴り物入りの関西広域連合の力量は不透明ですし、琵琶湖を要する滋賀県の利益をどのように守るのかの戦略が見えないのが実態です。知事選後に自治創造会議の改革を提案しましたので、年4回の定例化は実現いたしましたが、滋賀県と県内首長の関係には依然として隙間風が吹いており、地方自治が試される状況であることに変わりはありません。広域自治の必要性の議論や役割分担、合意形成ルールの確立などが十分になされないまま、なし崩し的に政策が進められることによるノッキングはいまだ解消していません。

湖南市の現状と課題

本市においては、厚みのある自治のさらなる活性化をめざし、従来からの区に加え、3年をかけてすべての地域にまちづくり協議会が設置されました。各まちづくり協議会は活発な活動を展開しておりますが、地域福祉の充実のためには、こうした自治の主体の基盤を強めていく必要があります。一方、本市の主幹産業である工業をはじめとする地域経済は、一部に持ち直しの兆しは見えるものの、設備投資面からみれば十分な回復が進んでおらず、個人市民税も含めた税収面でも足踏み状態を続けています。その結果、依然として厳しい財政状況に置かれていることから、その健全化が喫緊の課題となっております。そうしたなかにおいても、着実な新市建設の進展が求められており、幹線道路整備については一定のめどが見えてきたものの、本年度策定いたします「湖南市総合計画後期計画」に掲げる主要課題の計画的実施に引き続き努める必要があります。教育現場は落ち着きを見せておりまして、今後は地域で学校を包み込むことのできる環境整備が求められてきます。また、今後急速に伸びてくる高齢化に備える必要があり、地域の支え合いによる福祉の持続できるまちづくりに取り組む必要があります。

予算編成の基本方針

こうした本市の現状と課題を受け、平成23年度当初予算の編成にあたっては、健全財政を堅持するとともに総合計画の計画的な実現を図るように努めました。本年度に引き続き、投資的事業および臨時財政対策債を除いた地方債の発行額をそれぞれ予算規模の10パーセント以内に抑制するとともに、行政改革を着実に実行することで、総合計画に掲げられた新市建設関連事業の計画的実施に必要とされる財源を確保することを目指しました。また、地域などから積極的な政策提案を受けながらまちづくりを進める地域活性化予算枠を設定しました。

しかし、国政の液状化による予算審議の状況によっては、予算が成立しても予算関連法案が不成立という事態も予想されることから、国や県の動向を的確に把握しながら、さまざまな展開に対して市民生活への影響を最も小さくするための努力をする所存です。

そこで、平成23年度の主要施策に触れながら、湖南市総合計画に沿いまして、施政の方向をお示しいたします。

人権尊重と自立・自助のまちづくり

まずは、みんなでともに進めるしくみをつくるための人権尊重と自立・自助のまちづくりであります。最初に、「新しい公共」を定着させるため、まちづくり協議会をはじめとした地域まちづくりの活性化を進めてまいります。具体的には、まちづくり協議会からの施策提案を受けて、市民主体のまちづくりを現実のものにしようとするものでありまして、そのために、これまで市役所幹部職員の地域担当制を導入し、図書館による地域活動の支援を行ってまいったところでございます。地域の責任ある主体の提案と活動が地域の活性化につながることを期待しておりまして、効果が十分あると判断できれば今後も継続してまいりたいと考えておりますし、地域活動の拠点施設の姿も含めてさらに地域まちづくりに関する議論を深めてまいります。また、すべての人の基本的人権の尊重の側面からは、不動産差別の実態調査や地域福祉交流センターの整備を進めるとともに、「男女共同参画推進計画(仮称)」や「多文化共生推進プラン(仮称)」を策定してまいります。

自然を活かし、自然と共生するまちづくり

つぎに、うるおいのあるまちをつくるための自然を活かし、自然と共生するまちづくりであります。「環境基本計画」を基本に環境保全に取り組むため、市内各主体のネットワーク化を図りますとともに、さまざまな市内環境指数の調査を行ってまいります。特に職員提案事業として、市役所の環境対策としても、電気自動車導入や庁舎へのLED照明導入、資産の長寿命化を図るためのカルテ作成などに取り組んでまいります。また、森林病害虫の防除対策を始め、天然記念物ウツクシマツ自生地の保護に取り組みますとともに、循環型社会の形成に向けて、引き続き排出物のリサイクルに努めるため、リサイクルプラザの補修に取り組むこととしております。さらには、上下水道の計画的な整備とともに、雨水排水や管路の老朽化などに適切に対応してまいります。

産業が集まり、人が集うまちづくり

つぎに、活気あるまちをつくるための産業が集まり、人が集うまちづくりであります。市街地・住環境の整備として、大津湖南都市計画区域のなかでの適切な土地利用を図ってまいりますとともに、引き続き住居表示地域の拡大と市営住宅の老朽化対策を進めてまいります。さらには、懸案となってまいりました火葬場の整備、霊園・墓地の適正管理についての議論を始めてまいります。また、道路網、河川の整備については、主要幹線道路の整備に一定のめどがついたものの、引き続き生活道路や河川未改修区間の整備に取り組む必要があるため、市内各道路の新設改良や河川の浚渫などに取り組んでまいります。さらに、公共交通の充実としてJR草津線の複線化や駅周辺整備などに取り組みますとともに、農林業の振興としては、優良農地整備のための甲西南部地区ほ場整備を引き続き進めるのに加え、戸別所得補償制度を適切に実施するほか、獣害の防止や農産物の販売施設整備の考え方を取りまとめてまいりたいと考えております。工業や商業、観光の振興や雇用の促進については、経済が冷え込んでいるなか、すでに供用を開始した道路網を活用した経済の活性化に期待するとともに、自立した各団体と連携をとりながら、施策を推進するほか、引き続き就労支援としての障がい者就労情報センターを運営してまいることとしております。

生涯を通じた安心と健康のまちづくり

つぎに、ほっとする暮らしをつくるための生涯を通じた安心と健康のまちづくりであります。まず、健康づくりの推進としては、本年度から子宮頸部がん検診の公費助成を始めましたが、成人健診にこれまで課題とされてまいりました肺がん検診の追加を行いますとともに、本年度に引き続き子宮頸部がんワクチンやヒブワクチンなど各種ワクチン接種を進めてまいります。また、医療の充実として引き続き公立甲賀病院組合の移転新築に参画するほか、石部医療センターの診療体制の見直しを行ってまいります。さらに、子育て支援の充実としては、政府の子ども子育て新システムの検討動向をにらみながら取り組む必要がありますが、引き続き子ども手当を計上いたしましたものの、国会審議の状況によっては適時適切な対応をしなければならない場面も考えられることは、とても残念なことです。現物サービスとしては、昨年市内で起きた乳児揺さ振り事故死を受けた多胎児家庭育児支援事業をはじめファミリー・サポートセンターやつどいの広場、一時預かり保育、子育て支援センターなどの幅広い子育て支援体勢を構築するとともに、引き続き乳幼児医療費の無料化を継続するほか、保育園や学童保育所の増改築を行います。また、「障がい福祉計画」や「地域福祉計画」の見直しを行い、計画的な障がい福祉施策および地域福祉を推進いたしますとともに、次期「介護保険計画」の策定と介護予防拠点の改修や新たな介護施設の開設準備に取りかかります。防災面では消防団の定員増により住宅団地地区の消防力を強化するほか、消防ポンプ車の買い替えなどを行うとともに、防犯面での防犯灯設置を行ってまいります。

誇りとなる市民文化を創造するまちづくり

つぎに、いきいきとした暮らしをつくるための誇りとなる市民文化を創造するまちづくりであります。教育内容の詳細については教育長による「教育方針」に譲りますが、平成23年度において、市内すべての小学校に学校支援地域本部が立ち上がることにより、コミュニティ・スクールや学校評議員などの地域で学校を包み込む教育環境づくりをさらに進めてまいりたいと考えております。就学前教育については、国において保育との整合を図るための子ども子育て新システムの議論が進んでいることから、こうした動きを注視しながら検討を加えてまいります。学校施設については、石部小学校の改築に向けた議論を始めるほか、三雲東小学校の下水道接続や各中学校校舎に扇風機を設置してまいりますし、食育面では、老朽化する給食センターの改築に向けた検討に着手いたします。社会教育面では、地域に開かれ、地域の「知」の収集・集積・発信のセンターとしての図書館の充実を図りますほか、各まちづくりセンターの活性化と(仮称)菩提寺コミュニティセンター整備事業の引き続いての促進、市民グラウンドの屋外トイレの整備などに取り組んでまいります。

効率的・効果的な行財政システムづくり

さいごに、明日を拓くしくみをつくるための効率的・効果的な行財政システムづくりであります。平成23年度は、「湖南市総合計画」も折り返し、「後期計画」が始まります。その6つの目標を実現するべく、さまざまな下位計画や条例規則、そして予算と人材を投入して総合的に取り組んでまいる所存であります。しかし、最初に触れましたように、国や県が不安定ななか、これまでのような取り組みを漫然と続けていてはジリ貧に陥るだけであり、安定したまちづくりの財源は自治体が自ら生み出す努力も求められます。そうしたところ、「第二次行政改革大綱」を策定し、市の行っている事業は市民一人当たりどのくらいの負担で行われているのか、市の施設を維持するためにはどのくらいの負担が必要なのか、市民や地域の主体的な社会貢献活動をどのように展開していくかなど、公会計改革や「新しい公共」の展開と実態に即した自治のあり方に関する議論を深め、財政の年度間調整も含め、将来に対する備えをしてまいりたいと考えております。

対外政策

さて、本市として他の自治体との関係について触れておきます。甲賀市と構成する2つの一部事務組合においては、し尿処理施設と公立甲賀病院の大きな施設整備が並行して進んでおり、できるだけ負担を抑えながら適切な市民サービスにつなげてまいります。栗東市と構成する広域協議会においては、引き続き国道1号バイパスをはじめとした広域交通に関する議論を深めてまいりますし、野洲市および竜王町と構成する広域協議会においては、地域活性化に向けた研究を続けてまいります。琵琶湖湖南中部流域下水道に関する広域協議会においては、関係市町のご理解により、本年度、負担率の見直しを行いましたので、平成23年度以降、本市にとって適正な負担額となってまいる予定です。また、水道事業に関しましては、「広域水道整備計画」が見直されましたので、この適切な執行を監視してまいります。滋賀県後期高齢者医療広域連合においては、国の制度改革の動向を見据えてまいります。その他の広域協議会等においても、本市民の利益を念頭に置きながら、各自治体と協力して各種施策を進めてまいります。さらに、北海道比布町との連携を深めるとともに、新たに「名探偵コナン」の作者の故郷であります鳥取県北栄町との連携を始めたいと考えております。滋賀県との関係は引き続き是々非々により取り組んでまいりますが、いずれにいたしましても、滋賀県市長会、近畿市長会、全国市長会の一員として、県や国に対する共同歩調をとってまいることといたします。

次の世代への責任

現在のわが国を評すれば、原理原則が消えていき、無原則時代に入りつつあります。さまざまな社会的制約は、自由な活動には障害になりますが、それを苦労して乗り越えることで新たな発展が約束されます。しかし、そうした制約をなくしてしまうことばかりに力を注ぎ、障害を乗り越える知恵を衰退させるばかりか、新しいルールすら築き上げることができないところに、今のわが国が直面する大きな問題があります。

システムを破壊するのは簡単ですが、新たなものを作るには社会の構成員の参加と気概と責任が求められるにもかかわらず、当事者にそうした意識が欠如しております。国家は国民を守るためにありますが、国家を解体することばかりに力を尽くし、国家を築く努力を欠いておりますし、自治体も国家あっての自治が保証されているにもかかわらず、あたかも主権国家のように錯覚した行動を恥じない、そして、それらを刹那的に熱狂して支えるマスコミと国民という構図は、芥川龍之介が感じた「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」よりさらに明確な不安として社会の閉塞感につながっています。

その一方で、ザックジャパンやAKB48、新しい守山市長や栗東市長など、若手の台頭も始まりました。子どもたちも世の中をシビアに見つめており、今さえよければよいという風潮には厳しい考えを持っています。昨年末には東京都内のある中学校に招かれた蓮舫行政刷新担当大臣に対し、中学生が子ども手当について「所得制限がないのはおかしい」、「財源がないならやめるべきだ」と主張したそうです。こうした次の世代が活躍し、わが国の活力が持続するようにすることは、現役世代に課せられた重い責任でもあります。そろそろ刹那的なバラマキではなく、将来も見据えたバランスある政策が求められます。

市といたしましても、分権時代の自治を担うために、大学等の知的資源や国などの関係機関と連携しながら、地域とのつながりのなかで政策形成能力を高め、前例にとらわれず柔軟で適切な判断力を持った志の高い職員の育成を進めてまいります。

おわりに

新しいまちづくりも軌道に乗りつつあり、前期に引き続き総合計画の後期計画をスタートさせる年を迎えましたが、これからは、本市が急速に高齢社会を迎えるという現実から目をそらすわけにはまいりません。新市建設を具体的に進めるにあたり、単年度だけの財源確保にとどまらず、財政の年度間調整も視野に入れて、引き続いての緊縮をしながら将来への飛躍に備えるという行財政運営上のバランス感覚が求められてまいります。議員各位ならびに市民の皆様にご理解をいただき、ご支援とご協力を心からお願い申し上げまして、平成23年度の施政方針といたします。

この記事に関するお問い合わせ先

総合政策部 秘書広報課 秘書係

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