令和4年度の平松のウツクシマツ自生地を守る取り組み

更新日:2024年03月29日

平松のウツクシマツ自生地を守るために、様々な保全事業をしています。

令和4年度は下記の事業を実施しています。

その他にも事業に取り組んでおり、その取り組みについてはウツクシマツ情報局に掲載しておりますので、ウツクシマツ情報局のページ

https://www.city.shiga-konan.lg.jp/soshiki/kankyou_keizai/norin_hozen/24759/24763_1/index.html

をご覧ください。

地上散布

地上散布

<散布状況>

新たなマツ材線虫病の感染を防止するために、マツノマダラカミキリがマツに寄り付けないようにするために、ウツクシマツ自生地全体を対象に薬剤散布を実施しています。

散布は、マツノマダラカミキリの成虫が羽化脱出するまでの時期に実施しています。

今年度は5月下旬と6月中旬に実施しました。

下草刈り

ウツクシマツ自生地内では夏にかけて雑草が繁茂します。雑草が伸びるとウツクシマツの若木に十分な日光が当たらないことから、ウツクシマツの若木の生育に悪影響を及ぼします。そのため、ウツクシマツ自生地内で雑草が伸びる時期に下草刈りを実施しています。

今年度は7月に1回目、9月に2回目の下草刈りを実施しました。草刈りにあたっては、雑草の中にウツクシマツの実生や若木が埋もれていることから、それらを誤って刈り取ることがないように注意しながら実施しています。実生や若木については目印としてピンクのリボンを付けています。

令和4年度下草刈り

<下草刈りの状況>

自生地内のマツの実生

<自生地内に天然で生えているマツの実生>

目印のピンクリボン

<マツの実生が生えていることを分かりやすくするためのピンク色のリボン>

落ち葉搔き、地掻き

秋頃からマツの落葉が始まります。この落ち葉を堆積したままにすると、落ち葉が土の栄養となり、自生地内に腐葉土として堆積することになります。マツの種子は、落ち葉が積もったところでは、芽が出ても根が土に深く入らないので生長しにくい特徴があります。

このことから、落ち葉が落ち切った冬に地面の落ち葉を回収し、出来る限り落ち葉が土地に堆積していないようにしています。

 

また、ウツクシマツ自生地は昔は地表が見えるほど堆肥が少なく、マツが生育しやすい環境でしたが、年月が経ち、落ち葉などが栄養となって腐葉土層が厚くなったことでマツが生育しにくい状況となっています。

そのため、一部の区画に限定して堆積した腐葉土を除去しました。堆積した腐葉土層は10cm以上あり、腐葉土層を相当取らないと地表が見えないほどです。マツが生長しやすい環境にするためにはこの腐葉土層をすべて除去したほうがいいのですが、自生地内にマツの根が張り巡っており、根を傷つけないように慎重に作業をする必要があり、また、一度に広い範囲で腐葉土を取ると自生地の環境が大きく変化し、地表が流されやすくなることで、土砂災害が起こる可能性が懸念されることから、2月頃に場所を区切って実施しました。

落ち葉搔き、地掻き

<落ち葉搔き、地掻きの状況>

枯損木伐倒

ウツクシマツ、普通のマツはさまざまな要因により枯れてしまうことがあります。枯れてしまった原因がマツ材線虫病である場合、その枯れたマツには、マツノマダラカミキリの卵があり、春には羽化して、そのマツからマツノマダラカミキリが飛び立ち、他のマツに移ります。

そのため、枯れた松は切り倒し、搬出して適切な処理をする必要があります。

枯れたマツは葉が赤くなり、やがて葉がなくなってしまいます。そのような症状が確認されたウツクシマツ1本を2月に伐倒し、ウツクシマツの自生地から搬出しました。

ウツクシマツシンボルツリーメモリアルオブジェの展示

国の天然記念物「平松のウツクシマツ自生地」には、大小さまざまなウツクシマツが生育していました。その中でもひときわ大きく、美しい形をしたウツクシマツがちょうど自生地の中央にありました。その高さは10m以上、樹齢は100年以上、幹回りは目線の高さで4m以上ある巨大なウツクシマツでした。平松のウツクシマツ自生地を訪れた人たちに「ウツクシマツ」を強く印象付けるシンボルの役割を果たしていました。

 

ところが、令和2年(2020年)夏、急にこのシンボルツリーであったウツクシマツの葉が真っ赤になり、枯死の兆候が出ました。

すぐに樹木の専門家に意見を聞きましたが、残念ながら枯死しているとの診断でした。

枯死したマツは松枯れの被害拡大につながる恐れがあること、また、木が弱っていることにより倒木の危険性があることから、大変残念ではありましたが、このシンボルツリーを伐倒することが決まりました。

 

そして令和3年(2021年)3月1日、多くの人が見守る中、惜しまれつつこのウツクシマツのシンボルツリーは伐倒されました。

平松のウツクシマツ自生地が国の天然記念物に指定されたのが大正10年(1921年)3月3日。

国の天然記念物に指定されてちょうど100年目にあたる月にそのシンボルとしての役目を終えました。

 

国の天然記念物に指定された時にも生きており、指定から100年間地元の人だけでなく、見学に訪れた多くの人を魅了したこのシンボルツリーの雄大な姿を、もう自生地では見ることはできませんが、その伐倒したマツの幹の一部を熱還元処理という防腐措置をして、令和4年4月から湖南市役所東庁舎玄関前に保存しています。

最後の姿を、一部だけですがありのまま残すことで、今は後世にシンボルツリーの在りし日の姿の断片を伝える役目を担っています。

シンボルツリーメモリアルオブジェ

<湖南市役所東庁舎玄関前シンボルツリーメモリアルオブジェ設置状況>

平松のウツクシマツ自生地指定100周年記念植樹碑の設置

記念植樹碑

<自生地前グラウンドに設置された記念植樹碑>

令和3年3月に平松のウツクシマツ自生地周辺にウツクシマツの苗木を移植しました。その中でもウツクシマツ自生地の前のグラウンドには記念植樹として湖南市長、平松区長、三雲学区まちづくり協議会会長が合同で植えた苗木があります。

この植樹が平松のウツクシマツ自生地が国の天然記念物に指定された大正10年(1921年)から100年目の年に実施されたこと、そしてこの移植する1週間前に、平松のウツクシマツ自生地前で100年以上生きていたウツクシマツのシンボルツリーが枯死したために伐倒したことから、この苗木が次の100年を象徴するウツクシマツとなるように育ってほしいとの願いをこめて、その苗木の横に記念碑を設置しました。

支障木伐採

自生地内のヒノキ伐採後

<自生地内にあったヒノキの伐採後>

平松のウツクシマツ自生地内にはマツだけでなく、ヒノキなどの樹木も生育しています。

しかし、このヒノキが大きくなり、その周辺にあるマツが日陰になっている場所がありました。

マツの成長には日光が必要ですので、マツに日が当たるように支障となるヒノキなどを伐採しました。

平松のウツクシマツ自生地前民地整備

平松のウツクシマツ自生地の前にもヒノキ林があり、ヒノキの樹高が高く平松のウツクシマツ自生地がヒノキ林の陰になっている部分がありました。

マツが生長するためには、日光が大切な要素なので、7月にその土地を所有している方々の承諾を得てヒノキ林を伐採しました。

ヒノキ林を伐採したことで、ウツクシマツ自生地内に日光が当たりやすくなったことに加え、今まではグラウンドからしか自生地内全体を見渡すことができませんでしたが、ウツクシマツ自生地前の駐車場からウツクシマツ自生地全体を見渡すことができるようになりました。

なお、ヒノキ林を伐採した跡地については、今後の活用方法を検討しています。

伐採位置図

<位置図>

自生地前施工後

<伐採後の状況>

生育実験

生育実験として移植したウツクシマツの苗木

<緑色の獣害柵で囲ったウツクシマツの苗木>

平松のウツクシマツ自生地内の環境が変化し、ウツクシマツの天然更新が進んでいないことから、ウツクシマツ自生地内のウツクシマツから採取した種子を苗畑に植え、育ててから自生地に移植して経過観察するという生育実験を行っています。

 

苗木はウツクシマツの特徴である幹別れしているものを選定し移植していますが、近年シカによる食害の被害が拡大していることから緑色の獣害柵も設置し、それぞれのウツクシマツの苗木のモニタリング調査を実施していきます。

この記事に関するお問い合わせ先

環境経済部 農林振興課 林業係

電話番号:0748-69-5603

ファックス:0748-72-7964

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